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カフスを奪われて机に置くと、俺を抱えてベッドにそっと下ろした。
組み敷かれて逃げ場が無くて、どうしていいか分からず目を閉じる。
「こっち見ろ」
手首を掴まれて縫い留められて、コツンと当たった額の感触に恐る恐る目を開けた。
「……ち、近いって…」
俺の心臓がもたない。
自分でも分かるぐらい、落ち着きない視線を披露してる。
そもそも、どこ見てたらいいんだよ。
そんなこと思いながら困っていると、それまでずっと俺を見ていた相良が突然笑った。
「ぶはっ」
笑った……っていうか、吹き出した?
「お前…ッ…まじ、照れてんのクソかわいいな」
「はぁ!?」
ちょっと待て。
その笑い方は、明らかに馬鹿にしてるよな。
「君が唐突にこういう嫌がらせをしてくるのが悪いんだろ!」
「嫌がらせなんかしてねーよ」
「してる」
これだ、って意味を込めて拘束された手首を振った。
相良はふと笑みを絶やすと、真顔のまま退こうとしない。
「嫌じゃねぇだろ」
「嫌だ」
「嫌じゃねぇ」
「…いい加減退いてくれ」
「断る」
そう言って今度は、額にキスを落とした。
「これは嫌がらせじゃねぇ。本気だ」
手が離れて、今度は身体をすっぽり包み込むように抱きしめられた。
「本気でこういう事してる」
埋まる胸元から聞こえる心臓の音。
(俺なんかよりずっと落ち着いてる)
なんか悔しくて、胸元を頭突きした。
少し揺れただけで、ノーコメント。
痛くも痒くもないらしい。
「あの言葉、嘘じゃねぇんだろ」
頭上から聞こえた言葉に、目を見開いた。
“あの言葉”
それは、俺が八島華に放った言葉だろうか。
「………………」
黙ったままの俺の髪を相良が撫でる。
「嘘じゃねぇって言え。頼む」
縋るように言われた気がした。
抱きしめる力が強くなる。
あの言葉は
嘘じゃない
抱いてるこの気持ちも
全部
でも
「…違うよ」
「あ?」
「…相良。その…俺―――」
抜け出して起き上がろうとした俺の腕を、相良が強く掴んで止めた。
「嘘じゃねぇって言え」
鋭い目が俺を見上げる。
つき、と心が痛んだ気がした。
何も言えなくて、上手く返せなくて、沈黙する。
(そうやって見ないでほしい)
その視線が、何もかも見透かしそうで怖い。
「君たちは…大事な人だ。それだけは嘘じゃない」
俺は卑怯者だ。
「ごめん」
震えそうになった腕に力を入れて彼の手を解くと、俺は部屋を飛び出した。
――――――
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黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時