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「喧嘩慣れがどうとかじゃなくて、君らの身体に痕が残るのが嫌なんだよ」

彼の左腕を捲って、八島の付き人と対峙した時にできた打ち身を確認する。
だいぶ薄れてきたな…よかった。

「オメーは人のこと言えねぇだろうが」

逆に手を取られて、引き寄せられた。
袖をまくれば腕の縫い傷。
それから首の切り傷。
人並みの回復力しか持ち合わせていない俺には精一杯の経過。
薄れないそれを指でなぞりながら、相良は顔をしかめる。

「痛くねぇか」
「少し痒い」
「打撲は?」
「もう治った。あとはこの二つだけ」

縫い傷は少し痕が残るかもしれないけど、首はきっと綺麗に治る。

「二人が風呂上がりに薬持って待ってるから、塗り忘れもなく順調に回復できるよ」

そう笑えば、相良が黙ってじっと俺を見つめた。
智司もそうだけど…彼らは不意をつくように、この意味深な視線を俺に寄越してくる。

「…あんまりじっと見るなよ」

これをされると妙な気分になる。
不快とはまた違う、胸騒ぎに近いような名称不明なソレ。
その正体が何なのか。
本当はなんとなく気づいてはいるのだけれど…



「A」



名前を呼ばれて、考えが止まった。
相良が上着のポケットから何かを取り出す。

「これ、やるよ」

長方形の小さな箱だ。

「開けてみ」

開けてみって…。
いたずらグッズじゃないよな?

少し警戒しながら箱を受け取ると、何が出てきてもいいように覚悟しながらそっと開けた。

「!」

意外にも、中から出てきたのはカフスボタンだった。
光ってるのはダイヤだろうか。
四角い金のカフス。
男性物のデザインに近いそれは、見覚えがある。

「この形…」

俺は相良に視線を向けた。
カフスを置いて、彼の手を取る。
くれたカフスと瓜ふたつのデザインをした指輪が、彼の指にはまっていた。

「お揃い」

相良はカフスを一つ取って、自分の指輪の隣に並べた。

「気に入らね?」
「いや…」

叔父さんから貰ったピンクゴールドのカフス。
無くなってからずっと袖に何もつけていない事を、彼は知っていたんだろう。



「ありがとう」



今夜はこれをつけてしのぎに出よう。
そんなことを考えていたら、ふと頬が緩んだ。

「………………」
「?」

視線を感じて顔を上げる。
相良と目があった。

「さが…」





唇が重なる。





目を見開いて固まる俺にリップ音を立てて離れると、彼はまた俺をじっと見た。

「しぃ」

人差し指を口に当てて、またキスをされる。

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作品ジャンル:恋愛
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黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時

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