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「八島藤助…顔上げな。おめぇさんがやらなきゃならねぇのは命を差し出すことか?…いいや、違う」

聞き覚えのある声。
この場にいるはずのないのに。


「テメェの倅の教育だ」


八島親子が顔を上げる。
それと同時に、俺は後ろを振り返った。













開久の不良たちの後ろから、若草色の着物を風に揺らして車椅子に乗る叔父さんの姿。













思考が停止する。
そんな俺たちの事は気にせず、アルが押した車椅子はゆっくりと前進して俺の傍で止まった。

「今回は不本意とはいえアンタの倅が仕掛けた戦争だ。落とし前はつけてもらうが、なにも命を差し出せとは言わねェさ」
「おや、3代目。随分お優しいんですね」
「結果的に俺も智司たちも生きてんだ。下のモンはいくらか死んじまったが、それで争い続けてたらカタギに迷惑かけちまうだろうが。…アンタは保守派でいりゃあイイ。過激派名乗ったところでいいこたァねーだろう」

怪我が痛むのか…腹のあたりを擦っている叔父さん。
無理して病院を出たに違いない。

「おお、Aンとこのオッサン!なんかすげぇ怪我してんな」
「バカ!おまっ、叔父さんだろ!この流れからして八島にやられたに決まってんだろ」
「テメェら三橋伊藤…3代目になんて口のきき方しやがる」
「智司が怒った…!」
「智司が怒った…!」
「お口チャックじゃねーよ!遅ェ!!!」

智司が三橋たちを凄みに行った。
それを見て、カラカラ笑うその笑顔。
俺の視線に気が付いて、見上げる目。

言いたいことがたくさんあるのに、始まりが見つからない。

「話は全部アルから聞いた。最後までテツたちに殺傷能力の高い武器を持たせなかったのは、そういうことだろう?」

拳を握る。





「よくここまで踏ん張った。A組を守ってくれて、ありがとよ」





伸ばした手が、ポンポンと俺の腕を優しく叩く。
魔法が解けたみたいに軽くなった膝を落とすと、そのまま叔父さんに抱き着いた。





「――――――…っ」





生きてた…。



ちゃんと生きてた。



もう二度と会えないんじゃないかと、心のどこかで思っていたから。





ギュッ…

「いででで!!!」
「あ、ご…ごめん。叔父さん、ごめん。忘れてた」

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作品ジャンル:恋愛
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黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時

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