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父のようになりたくない。
想いの風化しない人間に会いたい。
俺にだって、普通の友達ができるはずなんだ、って。
「小学校高学年の時に、親友だった子に打ち明けたことがあった。そしたらその子は、父親の会社と繋がりのあった銀龍会にそのことをバラした」
お陰で俺は下校時に誘拐されて、恐ろしい目にあった。
「中学生初頭、信用できそうな男の子に打ち明けたら、翌日その子の兄貴とやらにボコボコにされたよ…。“弟をヤクザに引きずり込もうとしたんだろ”って」
そうして独りになって、勉強に打ち込んで、やり過ごしてたら理子ちゃんが話しかけてくれた。
高校生になっても彼女は変わらず接してくれたけど、これは自分がカタギと偽ってるからこそなんだって思わずにいられなかった。
「三橋と伊藤と出会って。のちに正体がバレて。…でも変わらず仲間として扱ってくれて。ようやくヤクザもカタギもない普通の友と呼べる人間を作れた気がしたんだ」
始まりこそ相互扶助な関係だった俺たち。
だけど最後は、なんのメリットもない俺の頼みを聞いて、A組を助けてくれた。
「だから、あとの3ヶ月は君たちの為に使いたい」
恩返しがしたいんだ。
理子ちゃんが鼻を啜った。
三橋と伊藤も、口を挟まない。
「ありがとう。俺と友達になってくれて」
そう言って笑えば、三橋はムスッとした顔で近づいた。
「ばかやろう。…こんな時だけ“ダチ”なんて言葉使うなよ」
ボスッと胸を殴られる。
「なんも言えねーじゃねぇか」
髪をぐしゃぐしゃにされた。
いつもより優しい手つき。
(らしくないな、三橋)
俺は乱れた髪の中で人知れず笑みを零した。
車が静かに走り出す。
窓の外を流れる景色に飽きて、俺は目を瞑った。
「よかったのか?他の奴らに事情話さなくて」
「いいよ。ヤクザのいる学校に在籍してたなんて、誰も知りたくないだろ」
軟高の不良たちには、三橋からいい具合に話しをしてもらう事になった。
真実は彼らだけが知っていればそれでいい。
「後悔しねぇのか」
「………………」
後悔か。
卒業するまで会えないのは、少し悲しい。
でも、いつかの日に伊藤が、卒業後もきっとまた三人で馬鹿やってるって言ったから。
「フフッ」
信じるんだ。
「寂しいけど、後悔はしてないよ」
大丈夫。また会える。
――――――
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黒のコ屋(プロフ) - S!nsei_zaさん» そ、そんな何回も読んで頂けるなんて…!糧すぎる!執筆の糧すぎるわ――!!(ドンチャン騒)これはとことん付き合ってもらいましょう!えぇ!勝手に連れて行きますかお気になさらry…((殴 スミマセンふざけ過ぎました。笑 応援コメントありがとうございます〜^^ (7月27日 18時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
S!nsei_za(プロフ) - 初めまして!いつも楽しく読ませていただいてます!何回も読み直すくらい大好きな作品です!三週目終わった所です…笑これからも応援してます! (7月23日 21時) (レス) id: 165fe81141 (このIDを非表示/違反報告)
黒のコ屋(プロフ) - 成瀬さん» コメントありがとうございます!主人公、ついにポロリと本音を出しちゃいました。もう本人の気持ちを知った元開久組に遠慮はありませんので、今後の絡みに乞うご期待ですね!(それを表現できる文才があるかどうかは別として)。最後までどうぞよろしくお願いします! (6月14日 17時) (レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 個人的には書籍化して頂きたいくらいに大好きなお話なので、最後までついて行かせてください☺️これからもお身体にお気を付けて頑張って下さい。応援しています!! (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
成瀬(プロフ) - 主人公がどれだけ二人のことを、組のみんなを大事に思っているか、想いを読むだけで泣きそうになりました。そして名シーン、『二度と人の男に手ェ出すな』というセリフ、本当にかっこよかったです。智司相良と同じく目見開いちゃいました笑 (6月13日 20時) (レス) id: 778f9ea582 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒のコ屋 | 作成日時:2023年5月29日 18時