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赤信号で止まる車。
ふと、智司が振り返った。
こいこい、と手招きされて身を乗り出す。
「なに？」
後頭部を掴まれて、優しくコツンと額が合わさる。
「無理すんな。弱さを隠される方が俺にとっちゃつまらねぇ」
彼の言葉に目を見開いていると、その隙にチュッと軽くキスをされた。
「ッ…」
真っ直ぐで強い目。
目が逸らせなくて、吸い込まれそうになる。
「A」
名前を呼んで、優しく笑った。
慈しむように頬を撫でるから、なんだか心が苦しくなる。
「智司…」
彼に触れられることは嫌いじゃない。
嫌いじゃないんだけど…
「信号青だぞ」
「………………」
空気がピシリと固まった。
何か言いたげなため息と一緒に彼は前を向いて、車が走り出す。
「…ワザとあしらいやがった…」
「冤罪だ」
「嘘つけ」
あのまましてたら、後ろからクラクションを鳴らされると思って言ってあげたのに。
(でも)
君が俺を大事に思ってくれてるのは理解してるよ。
だから今更弱みを隠すつもりはない。
「智司」
「なんだ？」
「本当に辛いときは言うよ」
運転席の後ろに移動して、彼の肩にそっと手を置いた。
「ちゃんと信頼してる」
少しの間の後、智司の左手が俺の手に重なった。
ぎゅっと優しく掴まれた手が暖かい。
「A」
「ん？」
「実は、お前が病院に行ってる間に3代目から連絡があった」
叔父さんから？
「今夜、埼玉の加治木組と会合が決まったそうだ。相手の組長が酒豪で、3代目の付き添いにアルさんと俺が抜擢された。八島組のまわりを抑えるためにも、埼玉牛耳ってる加治木組の力が必要になるらしい」
重要な会合だ。
新人とはいえ、ヤクザの酒豪相手に渡り合えるのはアルと智司ぐらいしかいない。
妥当といえば妥当だろう。
「そうか、大役だな。よろしく頼む。…上手くいったら何かご褒美でも用意しようか」
そう言って微笑むと、智司がふとその話題に喰いついた。
「何でもいいのか？」
「難しいモノじゃなければ」
「………………」
「？」
「外泊デート」
「………………」
「………………」
冗談に聞こえないその一言に、俺はゆっくりと身体を沈めてルームミラーの視線から逃れた。
(逃げやがったコイツ)
(…なんてモン頼むんだこの男は)
聞かなかったことにしよう。
――――――
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黒のコ屋(プロフ) - ぬんさん» ご感想ありがとうございます！ろ、六週目ですと！？なんと素敵なんだぬんさん！とっても嬉しいです〜！最近ｼﾘｱｽばかりでｷｭﾝｷｭﾝ要素が不足しておりますが、需要があれば番外編とかでたくさん作りたい…！引き続き頑張りますね！ありがとうございました^^ (2023年1月19日 11時) (
レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん(プロフ) - 神作品をありがとうございます……(;´༎ຶٹ༎ຶ`)現在六週目です。相良くんと片桐くんにキュンキュンしながら見てます(ง ◜௰◝ )ว応援してます！！！！！ (2023年1月17日 7時) (レス) @page45 id: 06c201b8c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黒のコ屋 | 作成日時：2022年11月2日 17時
