68-6 ページ20
.
「とりあえず、お疲れ様だな」
「あぁ」
「おう」
「優秀な付き人たちのおかげで北根壊を牽制できたよ」
そう言って笑うと、二人は照れたように視線を外した。
開久の不良たちが黙って見守っている。
…なんだかんだ言って、彼らも少し丸くなったよね。
「でも、柳の野郎ぶっ殺せなかった」
「いいとこも全部三橋と伊藤に取られちまったしな」
「大したことじゃないさ」
「「大したことだ」」
「ん…じゃあ、柳たちが冴輝組に入ったら、いの一番に殴りに行くか」
今回は学生として喧嘩を売ったが、それも今日かぎり。
明日からはまたヤクザとカタギの関係に戻る。
彼らと再び相対することがあるとすれば、柳達がヤクザになるのを待つしかない。
「それいいな。冴輝組のオッサンに打診しとこうぜ」
「3代目に怒られンぞ」
悪ノリしてくれた相良と一緒にケラケラ笑う。
智司には呆れたようにため息をつかれたけど、これでいい。
開久は北根壊という脅威から開放された。
もう彼らが大きな顔で街を歩き、堂々と悪事を働くこともないだろう。
(二人の力になれた)
彼らの憂いを消し去ることができたなら、それが一番嬉しい。
俺は密かに二人の手を握って笑みをこぼした。
病院での手当てを終えると、全員を学校まで送り届けることになった。
まず着いた軟葉高校では、門前に3年生担当の教員がずらり。
何の連絡も無しに抜け出してきた三橋たちは、みんな椋木先生に捕まって強制的に連れ戻されていった。
「Aだけずりぃぞ！！」
「ずるくないよ。俺ちゃんと休みの連絡入れたもん」
「俺もバックレたいー！！」
そんな三橋に手を振って見送ると、次に開久高校へ向かう。
相変わらず落書きが酷い校門の前で俺たちを降ろすと、組員たちは俺に軽く挨拶だけしてしのぎに戻っていった。
「彼らは出迎えなしか」
「居たらこえーよ」
静かな校門前。
智司と相良は彼らに改めて向き合う。
「テメェら、二度と開久の看板汚すようなことすんじゃねぇぞ」
「「「「「はい」」」」」
智司の言葉に、しっかりと返事を返す不良たち。
だが、その顔は少し寂しそうだ。
「やっぱりここには残ってくれないんすか」
「あぁ。世話になってる方々がいらっしゃるんでな」
相良が横にいた俺の頭にポンと手を乗せる。
「じゃ、後はよろしく頼むわ」
その言葉に、開久の不良たちはぐっと唇をかみしめた。
俺たちは背を向けると、開久高校を後にする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒のコ屋(プロフ) - ぬんさん» ご感想ありがとうございます！ろ、六週目ですと！？なんと素敵なんだぬんさん！とっても嬉しいです〜！最近ｼﾘｱｽばかりでｷｭﾝｷｭﾝ要素が不足しておりますが、需要があれば番外編とかでたくさん作りたい…！引き続き頑張りますね！ありがとうございました^^ (2023年1月19日 11時) (
レス) id: ec11750d33 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん(プロフ) - 神作品をありがとうございます……(;´༎ຶٹ༎ຶ`)現在六週目です。相良くんと片桐くんにキュンキュンしながら見てます(ง ◜௰◝ )ว応援してます！！！！！ (2023年1月17日 7時) (レス) @page45 id: 06c201b8c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：黒のコ屋 | 作成日時：2022年11月2日 17時
