変わり始める、春 ページ48
窓から見える近所の公立小学校の校庭は鮮やかなピンクで彩られていた。
いつもよりも早い時間に起きて準備をする。
紺色のブレザーに袖を通した瞬間、身が引き締まる感じがした。
机の上にはあの一年間、何度も何度も見返した高校のパンフレットがある。
そこに載っている女子の先輩は、後ろに束ねた黒髪が制服によく似合っていた。
伸ばそうかな、と悩んでいた髪。
だけど今年、ずっとショートボブだった髪をさらにショートカットにした。
鏡に映る自分の髪は相変わらず短くて少し茶色がかっていたけれど、 これが私だ。
頭と共に気持ちも軽くなった気がする。
棚に置いてあるシンプルなカレンダーは、気がつけば“４”を掲げていた。
お母さんが変えたのだろうか。
その横で、私によく似た怪獣が私を睨む。
「そんな目で見ないでよ」
今日はおめでたい日なんだから。
リビングで温かいミルクティーを飲みながら朝のニュース番組を見た。
綺麗なアナウンサーのお姉さんによると、今日は一日中暖かいらしい。
門出にはもってこいの日だ。
ピカピカの黒いローファーを履いて、ピカピカの黒いカバンを肩からさげる。
「行ってきます」
澄み切った青空の下で深呼吸をしてみる。
お隣さんの庭の花壇の花の匂いや、鳥の鳴く声、空気、全てが新鮮に感じた。
今年もまた、春がやってきた。
初めて一人で歩くこの道
初めての電車通学
初めて買った定期券
ブレザーのポケットには入学祝いで買い換えてもらったばかりのスマホが入ってて
なんだか中学生の時よりも大人に近づいた気分だ
知らない人達ばかりの中で
私はちゃんとやっていけるだろうか
大きい校舎に迷いそうになりながらも、なんとかクラス表の掲示場所にたどり着いて“紀田A”の文字を探し出した。
恐る恐る中に入ると、人はそこそこいるのにまだ教室は静かだった。
席についたのはいいものの
無駄に緊張してしまって行動できない。
その時、後ろからツンツンとつつかれた背中
振り向くと、ニッコリと私に微笑む男の子
何故かその状況に、全然関係無いはずの二年前の出来事が頭を過ぎった。
佐野くんが遅刻ギリギリで、
私の左手が行き場を失ったあの時。
男の子が向けるその笑顔に
懐かしさを感じてしまうのはどうしてだろう？
「初めまして！小森隼です」
大好きなアナタがいない毎日
初めてだらけの日々の中で
また、少しずつ、私の生活は変わっていく。
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ど根性みかん - このお話凄く大好きです！読んでいて切なくなります。早く続きが読みたいです！これからが楽しみです！ (2019年3月19日 22時) (
レス) id: c0b50274da (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - はすおさん» コメントありがとうございます！！そんなふうに言っていただけるなんて、涙が出るくらい嬉しいです(；ω；)なかなか上手く重ならない二人ですが、あたたかく見守っていただけますと嬉しいですm(_ _)m(笑) (2018年2月13日 21時) (レス) id: 03a3cd796e (このIDを非表示/違反報告)
はすお(プロフ) - んーーー！！めっちゃ読み途中で｢心配｣読み終わったとこなんですけどちょっと好きすぎて！！最高です！！素直になれない玲於可愛すぎます｡｡｡主人公とのすれ違いに叫びそうになる｡｡｡素晴らしい作品ありがとうございます、これから続き読んできます笑笑 (2018年2月13日 19時) (レス) id: 2c6c075be9 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます！！感動だなんてそんな…(；ω；) 勿体ないお言葉です(笑) これからも精一杯頑張りますので、よろしくお願い致します(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - ゆいさん» 温かいお言葉ありがとうございます(;_;) 続編ではもっと自然に現代に繋げていけるようなお話を考えていきたいと思いますので、読んでいただけますと嬉しいです(*^_^*) 勧めていただくのに恥ずかしくないような作品に頑張って作り上げていきたいと思っております(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きのぴお
| 作成日時：2018年1月3日 1時
