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誘い方 ページ36

佐野くんの隣を歩くのはあの秋の日以来。

あの時は顔を覗かれても、頬をつねられても
何をされても平気だったのに
今では隣に並ぶだけでも胸が苦しい。


「えっと、もうすぐクリスマスだね」


ふる話題がこれ以外に思いつかなかった。


「Aちゃん、サンタさんにお手紙書きまちたか?」


「ちょっと、バカにしないでよ」


こうやって佐野くんと軽口叩くのも久しぶりで楽しかった。

だけど


「佐野くん、菜々香のこと誘った?」


焼却炉の前まできて、やっと切り出すことができた。
報われないことはもう
この気持ちに気づいた時から分かってるから。


「……まだだけど」


“まだ”
その言葉に胸がチクリとした。

もし佐野くんが誘う気がなかったのなら
夏休みみたいに4人で集まって、皆でパーティーして
そんな風に過ごせたらいいな、なんて
あまりにも厚かましいことを考えた自分をぶん殴ってやりたかった。


「菜々香、待ってるからね」


佐野くんは不器用で照れ屋さんだから自分から言えないのかもしれないけど。


「……どうやって誘えばいいの?」


ゆっくり振り向いた佐野くんの顔はちょっと不安そうですごく可愛くみえて、思わず笑みがこぼれる。


「普通に誘ってくれるだけで女の子は嬉しいよ」


特別な言葉なんていらなくて。
好きな人からのお誘いは誰だって嬉しいんだよ。


「女の子ね、ゴリラに言われても」


「ぶっ飛ばすよ」


「女の子が言う言葉じゃねーよ」


ケラケラと笑いながら言葉を続ける。


「お前も普通に誘われたら嬉しいわけ?」


「そりゃあ、まあ」


「ふーん」


興味なさそうに佐野くんは言った。
確かに私が嬉しいかどうかなんてどうでもいいかもしれないけど、
聞いてきたのはそっちでしょ?


「じゃ、私、戻るから」


少し腹が立って
またねって言って背中を向けようとした時


「えっ」


私よりも少し大きい手が腕をつかんで、急激に縮められた距離。


「25日、俺がもらってもいい?」


「え……」


突然佐野くんから発された言葉に耳を疑う。
佐野くんの真剣な瞳から目が逸らせなくて困った。


「……こんな感じ?」


「……バカ、普通じゃないよ、それ」


「え」


「中学生の誘い方じゃない、却下」


「あ、ちょっと」



佐野くんの言葉を待たずにゴミ箱を抱えて走り出した。


私はただの予行練習。


だから、だから、


「お願い、静まって」


ドキドキなんてしないで、私の心臓。

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設定タグ:GENERATIONS , 佐野玲於 , GENE   
作品ジャンル:恋愛
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ど根性みかん - このお話凄く大好きです!読んでいて切なくなります。早く続きが読みたいです!これからが楽しみです! (2019年3月19日 22時) (レス) id: c0b50274da (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - はすおさん» コメントありがとうございます!!そんなふうに言っていただけるなんて、涙が出るくらい嬉しいです(;ω;)なかなか上手く重ならない二人ですが、あたたかく見守っていただけますと嬉しいですm(_ _)m(笑) (2018年2月13日 21時) (レス) id: 03a3cd796e (このIDを非表示/違反報告)
はすお(プロフ) - んーーー!!めっちゃ読み途中で「心配」読み終わったとこなんですけどちょっと好きすぎて!!最高です!!素直になれない玲於可愛すぎます。。。主人公とのすれ違いに叫びそうになる。。。素晴らしい作品ありがとうございます、これから続き読んできます笑笑 (2018年2月13日 19時) (レス) id: 2c6c075be9 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます!!感動だなんてそんな…(;ω;) 勿体ないお言葉です(笑) これからも精一杯頑張りますので、よろしくお願い致します(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - ゆいさん» 温かいお言葉ありがとうございます(;_;) 続編ではもっと自然に現代に繋げていけるようなお話を考えていきたいと思いますので、読んでいただけますと嬉しいです(*^_^*) 勧めていただくのに恥ずかしくないような作品に頑張って作り上げていきたいと思っております(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きのぴお | 作成日時:2018年1月3日 1時

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