掃除当番 ページ35
ちらちらと雪が降りだすのが窓から見えるお昼過ぎ。
私は目の前に散りばめられた数字と格闘していた。
先生の声はもう子守歌にしか聞こえなくて
満たされたお腹のせいでさらにうとうとしてしまう。
ふと前の席を見ると男の子が真面目にノートをとっている。
前を見てもあの背中はない。
小さく欠伸をしてパチッと軽く頬を叩いた。
気を取り直して黒板に向き合う。
冷たい風がカタカタと小さく窓を鳴らす。
佐野くんを好きだと自覚してから初めての冬がきた。
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「ね、A、もうすぐクリスマスだね」
ウキウキとした顔で菜々香がほうきを左右に振る。
せっかくつくった塵の山はあっけなく飛ばされた。
「ちょっとー、ちゃんとはいてよ」
「わっ!ごめんごめん」
浮かれてた、そう言って照れながらゴミを集めなおした。
菜々香が浮つくのも無理はない。
今は12月半ば。
もうすぐクリスマス、恋人にとって大切な日がやってくる。
「いいなぁ、リア充は」
「でも、その、まだ誘ってなくて」
ちりとりにゴミを入れながら菜々香が呟いた。
「佐野くん、誘ってくれてないの?」
「いつも遊びもあんまり誘ってくれなくて…」
菜々香が悲しそうに笑った。
ダメだな、佐野くん。
そういうのは男の子から誘ってあげなきゃ。
「あ、ちょっとこれ捨ててくるね」
「うん、ありがと!」
小さなドラム缶のようなゴミ箱を持ち上げて教室を出た。
空気の入れ替えのために全開の窓から入ってくる風は
冷たいなんて言葉じゃ表せないくらい私の身を凍らせた。
一階まで階段をおりて職員室まで来た時
見覚えのある背中がいて、思わず立ち止まった。
突然聞こえなくなった足音が気になったのか、その背中は振り返って
「あれ、Aじゃん」
私に向かって笑顔を見せた。
「……なんでまだ残ってたの?」
「呼び出し、寝てたから。そっちは?」
「掃除当番、です」
自分の気持ちに気づいてからというもの
佐野くんと今まで通りに接する自信がなくて、
4人でいる時以外は話しかけなかったもんだから
久々の二人きりに緊張してしまう。
「それ、貸して」
佐野くんが手を伸ばすと同時に腕の重みが消えた。
「え、いいよ、そんなに重くないし」
私の言葉を無視してスタスタと歩いていく。
「……もう」
久々に追いかける佐野くんの背中は
やっぱり優しくて
前よりも少しだけ、大きく見えた。
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ど根性みかん - このお話凄く大好きです!読んでいて切なくなります。早く続きが読みたいです!これからが楽しみです! (2019年3月19日 22時) (レス) id: c0b50274da (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - はすおさん» コメントありがとうございます!!そんなふうに言っていただけるなんて、涙が出るくらい嬉しいです(;ω;)なかなか上手く重ならない二人ですが、あたたかく見守っていただけますと嬉しいですm(_ _)m(笑) (2018年2月13日 21時) (レス) id: 03a3cd796e (このIDを非表示/違反報告)
はすお(プロフ) - んーーー!!めっちゃ読み途中で「心配」読み終わったとこなんですけどちょっと好きすぎて!!最高です!!素直になれない玲於可愛すぎます。。。主人公とのすれ違いに叫びそうになる。。。素晴らしい作品ありがとうございます、これから続き読んできます笑笑 (2018年2月13日 19時) (レス) id: 2c6c075be9 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます!!感動だなんてそんな…(;ω;) 勿体ないお言葉です(笑) これからも精一杯頑張りますので、よろしくお願い致します(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - ゆいさん» 温かいお言葉ありがとうございます(;_;) 続編ではもっと自然に現代に繋げていけるようなお話を考えていきたいと思いますので、読んでいただけますと嬉しいです(*^_^*) 勧めていただくのに恥ずかしくないような作品に頑張って作り上げていきたいと思っております(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きのぴお | 作成日時:2018年1月3日 1時