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久しぶり ページ28

「佐野くん……」


「服びちょびちょじゃん」


パタパタと佐野くんの傘に雨が当たる。


「うん、傘忘れちゃって」


まともに佐野くんの顔が見れない。
さっきまであんなに頭の中に佐野くんがいたのに、目の前にいる今は頭の中は真っ白で。


「佐野くんはなんで公園に来たの?」


二人で話すのなんて、まさに初めてこの公園に二人で来た時以来で緊張する。


「通ったらお前がいたから」


「え……」


「もしかしたら、傘、ねーのかなって」


それでわざわざ来てくれたの?


「ない、けど……」


「じゃ、おくってく」


なんでそんなに優しいの?


「いいよいいよ!止むの待つし」


それに傘1本しかないでしょ?
相合傘じゃん、それはダメ


「は?何言ってんだバカ、風邪ひくぞ」


「でも、傘一緒に入るのは、ダメ」


「なに、嫌なわけ?」


明らかに不機嫌になる佐野くんの顔
そりゃあ、親切で来てくれたのに拒否されたら誰だってムカつくよね。


「嫌じゃない、そうじゃなくて」


「…菜々香のこと気にしてんの?」


珍しく察しの良い佐野くん。
図星だから何も言えなくて俯いてしまう。


「…分かった」


佐野くん、嬉しいけど、ごめんね。
もう菜々香以外の女の子にあんまり優しくしないで。


そんな私の願いとは裏腹にギシ、とベンチの木が軋む音が聞こえた。


「……なにしてんの」


「俺も雨宿りすんの」


「傘持ってるじゃん」


「止むまで話し相手になってやるっつってんの、ありがたいと思えバーカ」


憎まれ口をたたきながら笑う佐野くんを見るのは久しぶりで、懐かしさに胸が締め付けられた。


菜々香を気にする私に気をつかうように一人分あけて腰掛けた佐野くんの優しさが、嬉しいのに何故か少し悲しかった。


「どこ行く途中だったの?」


「腹減ったからコンビニ」


「ごめんね、お腹空いてたのに止めちゃって」


「別にいいって、でも腹減ったな」


「いいよ、気にしないで行ってきて」


「……そ、じゃ行ってくるわ」


絶対待ってろよって、数メートル先で振り返った佐野くんが言う。


いっそこのまま帰ってくれた方がいい
無理矢理そんな考えを頭に浮かべるけど、

早く帰ってきてほしい、なんて、
胸の奥底から出てくるものがそれをかき消した。


佐野くんといると感情豊かになっちゃうよ。


嬉しいのに、悲しかったり
切ないのに、嬉しかったり


矛盾だらけの心に嫌気がさした。


雨はまだ止みそうにない。

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設定タグ:GENERATIONS , 佐野玲於 , GENE   
作品ジャンル:恋愛
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ど根性みかん - このお話凄く大好きです!読んでいて切なくなります。早く続きが読みたいです!これからが楽しみです! (2019年3月19日 22時) (レス) id: c0b50274da (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - はすおさん» コメントありがとうございます!!そんなふうに言っていただけるなんて、涙が出るくらい嬉しいです(;ω;)なかなか上手く重ならない二人ですが、あたたかく見守っていただけますと嬉しいですm(_ _)m(笑) (2018年2月13日 21時) (レス) id: 03a3cd796e (このIDを非表示/違反報告)
はすお(プロフ) - んーーー!!めっちゃ読み途中で「心配」読み終わったとこなんですけどちょっと好きすぎて!!最高です!!素直になれない玲於可愛すぎます。。。主人公とのすれ違いに叫びそうになる。。。素晴らしい作品ありがとうございます、これから続き読んできます笑笑 (2018年2月13日 19時) (レス) id: 2c6c075be9 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます!!感動だなんてそんな…(;ω;) 勿体ないお言葉です(笑) これからも精一杯頑張りますので、よろしくお願い致します(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - ゆいさん» 温かいお言葉ありがとうございます(;_;) 続編ではもっと自然に現代に繋げていけるようなお話を考えていきたいと思いますので、読んでいただけますと嬉しいです(*^_^*) 勧めていただくのに恥ずかしくないような作品に頑張って作り上げていきたいと思っております(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きのぴお | 作成日時:2018年1月3日 1時

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