ノート ページ3
初めて佐野くんの会話した日から早一ヶ月。
「………ｽｰ………」
左隣の席からは規則正しい寝息が聞こえる。
佐野玲於くん、今日も寝ています。
大丈夫かな、この人。
寝すぎて普通に心配になる。
この一ヶ月間の変化。
知らない人、から何か変わったとするなら
キーンコーンカーンコーン
「…ん……終わり………？」
「終わったよ」
「……貸して、ノート」
授業ノートを貸してあげるようになったこと。
それも毎時間。
「たまには起きて聞けばいいのに」
「それは無理」
佐野くんが起きれない理由。
それは夜遅くまで続くダンスの練習。
「明日からは貸さないからね」
「それ毎日言ってる」
佐野くんがフッと笑う。
私は何故かこの笑顔に弱い。
顔が綺麗なんだよなぁ、顔が。
「……もう今から貸さない」
「とか言って」
スキを見て私の手からノートを奪い取る。
「あ！ちょっと！！」
「ありがたくちょーだいします」
こんな感じで結局佐野くんが勝つ。
思わず顔が歪んで眉間に皺がよる。
「そんな顔すんなよ、ブース」
私から奪ったノートで頭をポンと叩かれる。
「佐野くんが毎日ブスっていうから余計ブスになりそう」
「それ以上ブスになりようがねーよ」
「ほんと最低」
佐野くんはもう聞いていない。
ガリガリと自分のノートにペンをはしらせている。
いつも約一時間分の板書を十分間で写しきる。
その集中力があれば授業聞けるよ。
と言いそうになるのを飲み込んだ。
「相変わらず字汚いね」
「うっせー」
「でも佐野くんの字好きだよ」
「なんだそれ」
「人を安心させる字」
「意味わかんねぇ」
佐野くんがまた、綺麗な顔で微笑む。
「A、サンキューな」
ほらね、早い。
キーンコーンカーンコーン
「あ、始まるね」
「おー、じゃ、おやすみ」
「また寝るの？」
そういった時には佐野くんは既に夢の中。
ほんと寝るの早いんだから。
自分の元へかえってきたノートを何気なくパラパラ見る。
「…………ん？」
そこには自分のものではない文字。
だけど私の好きな文字。
“俺もAの字、好きだよ”
「意味わかんねぇ」
ちょっぴり佐野くんのマネをしてみる。
私と佐野くんの関係。
それは特別仲の良い友達でも
ましてや恋人なんかでもなくて
ノートの貸し借りと
ちょっとの憎まれ口を叩き合う
お隣同士。
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ど根性みかん - このお話凄く大好きです！読んでいて切なくなります。早く続きが読みたいです！これからが楽しみです！ (2019年3月19日 22時) (
レス) id: c0b50274da (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - はすおさん» コメントありがとうございます！！そんなふうに言っていただけるなんて、涙が出るくらい嬉しいです(；ω；)なかなか上手く重ならない二人ですが、あたたかく見守っていただけますと嬉しいですm(_ _)m(笑) (2018年2月13日 21時) (レス) id: 03a3cd796e (このIDを非表示/違反報告)
はすお(プロフ) - んーーー！！めっちゃ読み途中で｢心配｣読み終わったとこなんですけどちょっと好きすぎて！！最高です！！素直になれない玲於可愛すぎます｡｡｡主人公とのすれ違いに叫びそうになる｡｡｡素晴らしい作品ありがとうございます、これから続き読んできます笑笑 (2018年2月13日 19時) (レス) id: 2c6c075be9 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - かもめさん» コメントありがとうございます！！感動だなんてそんな…(；ω；) 勿体ないお言葉です(笑) これからも精一杯頑張りますので、よろしくお願い致します(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)
きのぴお(プロフ) - ゆいさん» 温かいお言葉ありがとうございます(;_;) 続編ではもっと自然に現代に繋げていけるようなお話を考えていきたいと思いますので、読んでいただけますと嬉しいです(*^_^*) 勧めていただくのに恥ずかしくないような作品に頑張って作り上げていきたいと思っております(*^_^*) (2018年1月25日 20時) (レス) id: b8deaede14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きのぴお
| 作成日時：2018年1月3日 1時
