プリムラの蕾03 ページ37
ありのままに伝えた。
俺は今無職だしお金もない。大野さんに頼ってしまうのは申し訳ないから、返事は無しにしてほしいって。
｢おれは、ニノを支えることはできない？
ニノのそばに居て、ニノが辛い時とか苦しい時に守ってあげることは出来ない？｣
大野さんはじっくり間を置いたあと、そう言ってくれた。
｢その人を、頑張る糧にする考えはなかったの？｣
脳裏に大野さんを思い浮かべていると、目の前の相葉さんが同じニュアンスで問いかけてくる。
｢…俺ね、その人のことが好きすぎるの。
だから、その人が傍に居てくれるだけでいいやって思っちゃう｣
大野さんを拠り所にして、大野さんを逃げ道にしちゃう。だからダメなんだって言うと、大野さんは｢そっか｣って言った。
｢…ニノは、今ナイーブになってるからね｣
相葉さんが頬杖ついて言う。
｢自分をそんなに追い込まなくていいんだよ、ニノちゃん。今回ので声がかからなかったとしてもニノちゃんまだハタチそこそこじゃない。これからのニノにもチャンスはゴロゴロ落ちてるよ。おれなんてアラサーで教師になるための勉強をしてるんだよ？｣
もっと自分を甘やかしてもいいんだよって言う。
絶望しないでっていう。
｢だから、なんでそんな悲しい理由で断っちゃったんだろうなあ。俺が今からその人に電話して誤解を解いてあげたいよ｣
｢んふふ、なんて言うのよ｣
｢どうぞこの子のことをよろしくお願いしますって｣
なんで親目線なんだよって笑う。
でも、もう俺から断ったんだから、いつまでも大野さんに縋ってちゃいけないんだ。
そう思いながら、話すのに、相葉さんは｢で、その人どんなの人なの？｣ってOLみたいなことを聞く。
｢…いっつも猫背で、喋り方ふにゃふにゃしてて、絶対何しても怒んないと思う。あと手が綺麗で、俺同じ男なのに、いつもエスコートしてくれて…｣
思い返しながら、指折り言ってると、どんどん大野さんのこと思い出してしまって、
｢もーニノ、ごめんって。大丈夫？｣
無意識のうちにボロボロ涙が出ていた。
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作者名：楽斗 | 作成日時：2021年11月6日 0時
