エレモフィラの銀色09 ページ21
きっと、大野さんは俺が好きなの知っててこう言ってる。まあキス強請ってるんだもん、そりゃ当然か。
顔を上げて、2人でまたちょこちょこ話してると
｢あの！｣
って、声をかけられた。
｢お話中、ホントすみません！あの！さっき、金木犀出てた方ですよね？｣
なんだこいつ、女の子みたいな顔してる。
目がうるうるしてる男が、周りを気を使ってるのか割と声のトーンを落として話しかけてきた。こっちじゃ聞きなれない、大阪弁のトーンかな？
｢もう、すっごい感動しました、あの、ファンです。すっごいファンです！あ！僕、あの、同じ大学の1年で、西畑って言います。ほんとは大学でお会いした時に、お声がけしようと思ったんですけど、たまたま、その、お見かけして…｣
しどろもどろになって顔が赤くなりながら話してくれてる。そういえば見たことあるかも、というより名前が、女の子たちが噂してて聞き覚えがあった。
｢どうしても、我慢できず…すみません…｣
話しながらどんどん冷静になってきたんだろう。最後の謝罪の言葉は落ち込んでしまっていた。
｢や、そんな、有難いよ。見てくれたんだ｣
｢はい、もう、ほんと生きててくれてありがとうございます｣
｢強火じゃん…｣
俺がぽかんとして言うと、大野さんが隣で、んふふって小さく笑った。大野さんの存在を思い出した西畑くんが、またあわわって慌て出す。
｢や！ほんとお邪魔してすみません！この気持ちだけ、お伝えしなきゃと思って｣
｢あはは、や、俺こそごめん、ちょっとトイレ行ってくるからもうちょい喋ってなよ｣
大野さんが気を利かせてくれて、西畑くんと俺を2人にする。西畑くんがシャツの胸の当たりの握りしめながら｢ごめんなさい、お邪魔してしまって…｣て泣きそうな顔して言うから、｢ほんと気にしないで｣って笑う。
｢演劇興味あるの？｣
｢あ、いや、友達が出てたんでたまたまだったんですけど、今日…｣
俺の顔をじっとみるので、｢あ、二宮｣って自己紹介をする。
｢すみません、二宮さんを今日初めて見て、すっごいカッコよくて、感動して…僕も、演劇サークル入ろうと…｣
｢え！ほんと？いいじゃん！おいでよ！｣
｢や、でもほんと、ど素人なんで、悩んでるんですけど｣
｢いいよいいよ、最初はみんな素人なんだから。わー嬉しい、部長に言っとくよ、あ、LINE交換しようよ｣
｢わ！いいんですか！すみません、僕から言うべきなのに｣
LINEを交換したぐらいで大野さんが戻ってきた。
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作者名：楽斗 | 作成日時：2021年11月6日 0時
