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「………えっ、?」
気の抜けた声が彼から溢れ落ちた。きんときくんいつも笑ってるから、こんなに色々な表情見れるのは初めてだな。なんて感動を覚えながら、彼に語り掛けるようにそっと言葉を紡いだ。
『だって、本当に悪い吸血鬼だったらこうやって突き放すようなことしないもん。餌に離れてほしくないって思うじゃん。でもきんときくんは、私のこと気遣って突き放してくれたんだよね?やっぱ優しいよ』
「……でも、」
『私、そんなきんときくんになら吸われてもいいよ』
彼の瞳の中に葛藤が見えた気がした。
「………ほんとに、いいの……?」
『…うん』
「………後悔しない、?」
『しないってば』
「………ありがとう、ほんとに」
ふわり、と彼は笑った。それは、いつも教室で見ている笑顔とは何処か違うもので、道端に咲くたんぽぽのような、ひっそりと、でもとっても素敵で。
「じゃあこれからよろしくね」
『うん!よろしく』
「あはは、なんか付き合いたてのカップルみたい」
彼は何処か照れくさそうに頬をかく。そんな反応をされたらなんだか自分まで照れてきた。
その時、最終下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。窓の外を見ると、いつの間にか空に藍色が混じり始めている。
「そろそろ帰ろっか。送るよ」
『ええっ…!?そんな、一人で帰れるよ?』
「途中で倒れられたら困るし」
きんときくんと会話を交わしているうちにいつの間にか自分の体調のことを忘れていたようで、確かに……。と遅ればせながら納得した。
______
「じゃあまた明日ね」
『うん!また明日』
家の前まで送ってもらった後、バイバイとお互いに手を振り合い別れようとしたけれど、きんときくんが「あ、そうだ」と何か思い出したようにまたこちら側を向いた。
「Aさんって、前に誰かにも吸われたことある?」
『えっ…?いや、無いけどー』
「………ふーん。そっか」
『どうしたの?』
「うーん、何でもないや」
何か考え込む様子を見せたきんときくんだったけれど、またいつものようにパッと笑顔を見せて、また明日ね。と別れの挨拶をした。
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神崎いのり(プロフ) - ゆのさん» 返信が大変遅くなってしまい申し訳ございません。コメントありがとうございます…!そう言って頂けてとても嬉しいです🥰緩くではありますがちまちまと更新していきますのでお付き合い頂けると幸いです✨ (4月19日 16時) (レス) id: 8fac357c0d (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - ほんとにとても癖です、、、!!!更新待ってます😿 (12月28日 15時) (レス) @page11 id: 8aabdc3085 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:神崎いのり | 作成日時:2023年12月15日 23時