glass flower

あいじょう10 ページ21

クリスマス間近、岸くんと2人だけで少クラのコーナー撮影があった。

「廉、まだ早いけど着替えとくか？」
「そやね、髪もしたいし」
「お前長いもんな〜」

近況報告をしながら、海人とのことを報告するタイミングを計る。

海人とはゆったりと関係を育めてると思う。
わがままで甘えん坊ではあるけど、彼氏感を全面的に出したい年頃らしいから、それに付き合ってる。
初めはイラッとしたけど、それが今じゃ可愛くもある。
本人には言わんけど。


鏡の前で「やっぱ痩せたな」と自分の裸の上半身を眺め呟くと、岸くんが突然悲鳴をあげた。
「マジか」「おおっ」と独り言を繰り返し、なぜか楽屋の鍵を閉めた。



「廉、リーダーとして大事な話がある」
「……お、おぅ？」
「俺は2人を応援してたぞ？だけどな、キスマークはダメだろ⁉そんなハレンチなっ」


は？

え？


「紫耀も紫耀だ！キスマークとかつけやがって‼」


キスマーク？
最近ヤッてないで？


もう一度自分の姿を鏡で見る。
薄っすらと鎖骨の下にキスマークがあった。
よく見つけたな、岸くん。
逆にすごい。
やっぱ野生的ーーっていうとる場合やない‼



相手が、違う……


「あ、あのなーー」
「そりゃ、お前らがやっと両想いになったのは嬉しいぞ？もういつまで両片想いやってんだって、じぐいわと相談したぐらいだし」
「ーーは？」
「あ、ごめん！実はさ、イワゲンが1番初めに気づいたんだよ、お前らの両片想い。で、しばらくして俺は廉から、神は紫耀から相談受けて」


待って。


聞きたない。



「俺と神はとにかく告れって言い続けてだな。俺なんて、男と付き合えばとかはっぱかけたんだぞ」



岸くん、黙ってや。


聞きたない言うてるやん。



「この前グッて親指立てたから、俺の作戦上手くいったんだと思ってたぜ。仲良くやってんだな」


鏡越しにキスマークを見てニヤニヤする岸くん。
ここで海人のことを言えばいいのに。


言えなかった。


「……付き合ってることは、舞台が落ち着いたら皆に報告するから……誰にも何も言わんでや」



そういうのが精一杯で。
キョトンとする岸くんが不安やったけど、それ以上は余裕がなかった。


脱いだ私服をもう一度着直して、楽屋を出る。
屋上に向かった。


外は雨やった。
おまけに風も吹いて寒い。



「…ちょうどええわ」



今更、紫耀の気持ちなんて関係ない。
俺は今海人と幸せやねん。





そやけど……




今だけ、



泣いてええ？




海人ーー。

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