glass flower

あいじょう5 ページ16

お風呂で1回。

ベッドで1回。


お風呂場のヤツは…全然優しくできなくて、廉が起きたら怒られそうだけど。
ベッドでは、廉が気持ち良くなれるよう、それだけを考えて…やった、つもり。



泣いてる目。
上気した頰。
半開きの口。
上下する肩。


今まで見たことのない廉。

オレしか知らない廉。


すごく胸がドキドキして。
すごく幸せだった。


なのに。

こうしてオレの腕に頭をのせて寝る廉の、寝顔を見てると、不安が押し寄せてくる。


毎日一緒で、
いっぱい笑いあって、
キスもして、
１つになって。

元カノたちとなら、もうそれで幸せだったのに。
前の男のこととか引きずってても、いつか忘れるからって、オレに絶対惚れるからって、気にならなかったのに。


廉とのスタートも同じだった。
好きな子のことなんて、
すぐ忘れてもらえると思ってた。
結ばれない相手を、
思い続けるなんて出来ないと思うから。

それなのに、時間が経つにつれて、廉の心の中にいる誰かの気配を感じられるようになった。

どうしてかわからない。


時々ものすごく、こわくなる。





「……ぅん、…っ、かいと…」
「……れん…起きた？」
「今何時？」
「もうすぐ朝」
「なんや、その漠然とした答え」

しどけない廉は、予想を裏切って穏やかだった。
静かに、横になったままで俺の顔を見てくる。

「ごめん、なさぃ」
「…なんやねん」
「痛かったでしょ？」
「…まぁ、そやな」
「殴っていいよ？」
「アホか」
「…れ、ん」

涙が出た。
もうわけがわかんなくて、止められなくて、廉の胸の中で泣いた。

「なんで海人が泣くんよ」
「だってぇ…だって、オレーー」

その続きは、廉のキスに遮られた。

触れるだけのキス。


「ーー俺のせい？」
「っちがう」
「好きやよ、海人」
「ーーっ」
「大好きやよ」


ずるいよ、廉。


どんどん好きになってく。


不安は消えないままーー。

あいじょう6→←裏について

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す