glass flower

あいじょう2 ページ12

舞台稽古も佳境に入ってきた。
年末の特番収録もスケジュールに組み込まれ、スタジオと稽古場を行ったり来たり。

海人との関係は順調だった。
元々スキンシップが多いから、変な目で見られることもなかった。
最近特別仲良いね、と言われるくらいや。

「今日はこのままソロの打ち合わせだから、廉、今日はこれでお別れだね」
「おう、俺は先輩と飯でも行こうかなぁ」
「浮気ものっ〜！」
「浮気ちゃうわ！息抜きやわ！」
「…廉、オレが女の子とご飯行ったらイヤでしょ？」
「…俺は束縛せーへん」
「え〜っ、オレは束縛したいしされたい〜！」

この頃男前度を上げた海人に迫られるとドキドキする。
それが悔しくて、素直になれない。
鞄を掴んで立ち上がる。

「アホな会話は終わり！…練習、がんばれよ」
「うん。廉はゆっくり休んでね」

海人は舞台のソロの振り付けに熱心や。
マンションで一緒にいるときも、相談されたりする。

真面目で、一生懸命で、センスがあって。
明るくて、素直で、面白くて。

こんな俺に、腐るほど好きって伝えてくれて。
いつも笑顔を絶やさへん。

正直、海人といると安らぐし、
紫耀のことを考える時間も減った。

岸くんの助言、正しかったんやな。


「廉！」

噂をすればなんとやら？
スタジオの廊下を、岸くんが歩いてくる。隣には、紫耀がいた。

「おつかれ」
「2人とも今から？」
「そ、今日はソロの調整」
「海人も今やっとるよ」
「そっか」
「廉、あれからどう？」

岸くんが首を少しだけ動かして、紫耀を示す。
俺は親指を立てて順調と返した。
岸くんがニヤリと笑う。
その意味はよくわからへんけど。
今度きちんと報告をしよう。

「ちゃんと休めよ」
「紫耀もな」

たどたどしい関係になった今も、
紫耀は俺を気にかけてくれる。
大きな背中は、いつも無言で支えてくれるし。
しんどい時は、気づけば横に紫耀がいる。


それはあまりに自然で。
尊いもの。

海人を好きになっていく今も。

紫耀の、何もかもが眩しくて。

全てが好きで。

全てが愛おしいままーーー。






紫耀と会わなければいいのに。
メンバーやから毎日顔を合わせる。

海人と幸せになりたいのに、
忘れられなくて。





今日、初めて合鍵を使った。
部屋に海人はいなくても。
今すぐ海人を感じていたかった。

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