最強のさんにん【キングダム】

30 ページ30

信がこんなに悲しみ苦しんでいるのに
私はあれから涙ひとつも流せない

自分の腕の中で
愛しい人が死んだというのに

今目の前で
大切な人が苦しんでいるというのに


─────何も出来ない


まるで感情がないかのように
出したくても出せない涙が

悲しみが、苦しみが

重く苦しく私の背中にのしかかった
もう何も出来ないというのに
まだ漂の血が服や腕に付着している

痛みも、重みも、悲しみも

もう全てが憎い
何も感じれない自分が疎い

疎い痛みに全てが眩みそうだ
血に、争い、政(まつりごと)、
全てが汚い穢れている


信「あいつはもう…」


苦しそうに声を発す信に
胸が引き裂かれるような気持ちを覚えた


信「生き返らないんだぞ!!!」


涙を流しながら怒りに任せて
剣を振りかぶる信

信の懇親の一撃は
先程までの速く重くなる

大男もそれに結構な力で抑える
素早い打ち合いが
目の前で繰り広げられていた


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿


【信の方が強い？】

【はい】

政「奇なことを言うお前はさっき二人は互角と申したぞ」

漂「二人で仕合いをすると全くの互角です

しかし────

私が勝てない猛者がいたとしても信はその猛者に勝てます」


政「お前との対戦は手を抜いているということか?」

漂「いえ信はいつも真剣です
ただどういうわけか私とは互角なのです」


政「フッ面倒くさそうな奴だなそいつは」


漂「そうなんですよ!ハハッ」


政「…」


漂「しかし…」


【本当に強いですよ、信は!!】


＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



信が放った素早い一撃に
大男の脇腹が掠れ切られた

朱凶「小僧ォォ」

大男は青筋を立てながら怒り狂う
怒り狂った大男に身体中を斬られ

信から血が吹き出るが
信も大男を斬り大男からも血が吹き出る

それに怒りがむしゃらに放った
大男の重い一撃は
目の前にいるはずの信には当たらず
空を虚しく切った


【大王様もしも私が倒れた時は信におつかまり下さい

あいつはきっと】






【誰よりも、高く翔ぶ!!!】





大男が気付いた時には
もう信は大男の頭の遥か高くで
剣を振りかぶっている


大男が驚き構えるのはもう遅かった


大男が驚き剣を頭上で構えたが
その剣さえも信の剣は砕き
その下の大男を思い切り


真下に叩き斬った

31→←29

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す