scene 23/side YOU ページ9
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座ってて、って言った健人さんは、なんだかいつもと違ってて、
..........妙な胸騒ぎがした。
健「実は.........ずっと、Aちゃんに隠してたことがあるの」
２人分のお茶を置いた健人さんは、私が一口飲む隙も与えず、そう切り出した。
そんな切羽詰まった健人さんは初めてだったから、何かあったのかな、とは思っていたけど。
健「俺ね.........。
最初にAちゃんに会ったときね、
本当は.........」
健「鍵なんか、忘れてなかったし、携帯だってちゃんと持ってたの。
あのとき手に持ってなかったのは事実なんだけど、
本当は、わざとコンビニに置いてきたの」
「.........どういう意味ですか........？」
健「つまり........あの日、俺が必死に助けを求めたりしてたのは.........あれは全部、演技だったってこと」
..........それは、
「それは...............全部、嘘、だったと........？」
健「.........うん」
嘘..........。
健「.........ごめん」
あの日、初めて会った日、
私が大家さんに電話しますか？って言ったときのキラキラした笑顔とか、
グゥゥって盛大に鳴ったお腹の音とか、
「めっちゃ料理上手いじゃん！」ってお母さんのロールキャベツを褒めてくれたこととか、
「俺には夢があるんだ」って語ってくれた大好きな色をした健人さんの綺麗な目とか..........
全部、全部、
.........「嘘」だっだっと.........？
健「Aちゃん.........本当にごめん。
騙すつもりはなかった、なんて綺麗事は言わない。
でも、それでも、Aちゃんに、俺のこと知ってほしかったから」
ごめんなさい、健人さん。
私、健人さんにバレないようにって隠してたけど、
本当は、結構傷ついてるの。さっきあなたが私に「いじわる」したこと。
おかしいですよね、中藤先輩のことだって、ごまかしてきたのは私の方なのに。
今では、「嘘」をついた先輩を、すごく軽蔑してる。
..........多分、そのせいなんだと思うんだけど、
たとえ、それが「健人さん」だったとしても、
...........今は、「嘘」をつく人を信じられない。
「........ごめんなさいッ、失礼しますッ」
健「Aちゃんッ」
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作者名：リンゴ | 作成日時：2016年5月29日 17時
