scene 19/side YOU ページ2
・
・
・
なんか、「月が綺麗だね」って言った健人さんの声が、
いつもみたいに優しい声じゃなくて、すっごい細い壊れそうな声だったから、
心臓が何かを察知したみたいに、ざわついた。
精一杯冗談っぽく言ってみたけど、
一番、冗談だと笑い飛ばせないのは私だ。
健「もしもさぁ、『I love you.』の意味で『月が綺麗ですね』って言われたら、
何て答えるのが正解なのかな？」
私の冗談に返した健人さんは、なんか温度が違うって言うか、
いつもみたいにはははッって笑ってくれなくて、変な胸騒ぎがする。
「ん〜、難しいですねぇ。
正解ですかぁ。」
だから、少しでも明るい空気になるように、声を張ってみる。
「正解かどうかはわかりませんけど、私だったら......『自分も今そう思ってました』って言うと思います。」
質問の答えとして正解かどうかはどうでもいい。
ただ、今の健人さんが何を考えているのかわからなかったから。
だから、健人さん。これで合ってましたか？
.........健人さんが言ってほしかったのは、何？
健「俺も、今そう思ってた。笑」
んふふ.........って笑い声が聞こえた。
良かった.......いつもの健人さんが帰ってきた。
そんな安堵感と、
ぎゅッって心臓が掴まれたみたいな感覚が、同時に私を襲う。
健「やっぱりAちゃん、さすがだわ。笑」
ふにゃ、って笑う健人さんが見える。
ありがとう、何かスッキリした。って声と一緒に、健人さんが顔だけヒョコッって隣りから現れた。
かわいいな、やっぱり優しいな。
..........好きだな。
さまざまな感情が混ざって、なんか鼻の奥がまたツーンとして、
キラキラ光る月が滲んできた。
・
scene 20/side YOU→←scene 18/side KENTO
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 590人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「中島健人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リンゴ | 作成日時：2016年5月29日 17時
