scene 18/side KENTO ページ1
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飲み終わったビールの缶を足元に置いておいたのがいけなかった。
隣りの明かりが点いて、しかもガラガラッ......って窓を開ける音がして、
.........君の独り言が聞こえて、
今は君と合わせる顔がないっていうか、こっちが勝手に気まずく思ってるだけなんだけど、
なんか変なことを口走ってしまいそうだったから慌てて部屋に入ろうとした。ら。
カンッ、カラカラカラ........って。見事に足元の缶を蹴った俺。
今がベランダで本当に良かった。
君の表情を見なくて済むし、それに、
俺がどんな顔をしていようと、君に見られる心配はない。
..........だから、少しだけ踏み外したことを言っても、君はきっと気づかない。
健「........月が.......綺麗だね........」
「あぁ、本当だ......」
俺が月を見ないで、君がいる方向を向きながら言ってるの、わからないでしょ？
「都心でも、こんなに綺麗に見えるんですね.......」
今の君の発言は、実に君らしくないね。
点数にしたら１３点かな。
読書好きなら、隠してる俺の本当の気持ちにも気づいてよ。深読み、してよ。出来るでしょ？
あー。ダメだ。どんどん溢れてくる。
「あ！もしかして今の、『I love you.』の方でした？笑」
なんつって。笑
って笑うAちゃんの声に、
あぁ、また君は俺を救ってくれたね。って思った。
ドロドロしたこの気持ちを、スルスルって流してくれた。
だから、
今は君の声しか見えないけど、月を君だと思って、好きだよ、って呟いてみた。
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作者名：リンゴ | 作成日時：2016年5月29日 17時
