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今でもお互いに本を貸しあったり、感想を言い合ったりしているけど、
それはいつもポストの中でだけだったから、
こうやって顔を合わせるのは、本当に久しぶり。
健「あ、そうだ、片づけてないんだった」
おじゃまします、って小さく言って、健人さんの部屋に入ると、
机の上に分厚い本が何冊か置いてあって、
その周りの床にも、何冊か本が開いた状態でそのままになっていた。
健「ごめん、ちょっと片づけるから待ってて」
「すいません、突然お邪魔しちゃって、」
こっちの声が聞こえていないのか、ザザーッっとか、ドサッとか、さまざまな音を立てながら、てきとーに本たちを端に追いやっている。
健「よし、こんなもんか。
おっけ、ここ、座ってて」
健人さんが台所に行っちゃって、私は素直に机の前に座った。
この前来たときとあんまり変わってない部屋だけど、健人さんが何冊も広げていた本が気になって、せっかく端に寄せてくれた本のところを覗く。
「えッ?分厚い.........」
そこには、あまり見慣れないタイトルの本が積まれていた。
『法律用語大辞典』とか、
『どんどん身につく六法』とか、
あとは、『刑法の基本を学ぶ』なんてのもあった。
そういえば、って思い当たることがあって、本棚の方も見てみる。
やっぱり、小説が並んでる棚の下の方には、法律関係の本がたくさん並んでいた。
確かに健人さんは、法学部だって言ってたっけ。
ちゃんと勉強もしてるんだなぁ、なんて一人で感心していると、
ふと、一冊の本が目にとまった。
ほとんど全部、本棚に並んでいるのに、一冊だけ別の棚の上に、
しかも表紙がこちらを向いた状態で立てかけてあった。
『虚ろな天秤』
もちろん、夏川浩子の小説。しかも、デビュー作である。
それを見て、はっとした。
そうか、これか。
だから、健人さんは.......。
そうだとしたら辻褄が合う。
知らなかった健人さんをまた一つ知ることができたなぁ、って思った。
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作者名:リンゴ | 作成日時:2016年5月21日 23時