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んー。と困ったように笑う健人さん。
.........あ、もしかして私、あきれられた？
それはなんか.........不本意だ。
健「じゃあさ、ひとつだけ、お礼のお礼、してくんない？」
「お礼のお礼？」
健「うん。それ、読み終わったら、俺にも貸してほしいな。
それなら道理に合ってるでしょ？」
.........かなり納得したように言う健人さんだけど、私は全然しっくりこない。
「........ほんとに、良いんですか.....？」
健「うん。だってAちゃんも俺も読めるわけだし.......
一石何鳥だろう、ってくらい得してない？笑」
たぶん、ひとつも得してない。むしろ損してるよ、健人さん！
あの日に出した手抜きご飯の恩が、こんなにも欲しかった本で返ってくるということに疑問を感じるよ。だってあのメニューで２０００円払ってくれるってことになるんでしょ？
健「だからAちゃん、もう諦めてね。笑
それはもう君のだから煮るなり焼くなり自由にしていいけど、俺に返すのは禁止です。
オーケー？」
「........ありがとうございます」
健「ん。最初から素直にそう言いなさい。笑」
そう言ってポン、と頭に暖かくて大きい手が乗った。
不意打ちだったからちょっと肩がビクッとしてしまった。
健「.........あ.....ごめん。笑」
「い、いえ........」
健「............じゃあ、あの、.......おやすみ」
「あ.......おやすみなさい」
ガタンッ
なんか、静かになって初めて気づいたけど、
ここ、外だった。しかも立ちっぱ。
.......かなり長いこと立ち話してたみたい。何やってんだろう。
ずっと持ったままだった本を見つめる。
.........せめて、超高速で読んでやろう。
そして明日にでも、健人さんに渡そう。
そんな風に一人で納得した私は、急いで自分の部屋に入った。
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作者名：リンゴ | 作成日時：2016年5月21日 23時
