変化 ページ2
「今日からさ、新しいとこに行って欲しいの。
とは言っても全く新しいとこじゃない。
産休入った先輩がね、持ってた会社なんだけど。上手く手の空いているのが、(A)だけなのよ」
自分の私利私欲のために仕事をこなしているような、上司に言われた。
手の空いている、という表現は引っかかるが、間違いではなかった。
周囲から意欲があるように見えない私は、成績もまずまずだった。売り込みが足りないのだろう。
お金がもらえればそれなりでいい。
それ以上の仕事をして、私が得られるのは何もない。
やりがいなど求めていない。
平穏で、抑揚のない日々が暮らせれば、それでいいのだ。
「わかりました。挨拶は今日早速済ませた方がいいでしょうか」
「そうね。顔を覚えてもらうには早いほうがいいと思う。1人で行ってきてくれる？」
はい、と生気のない返事をし、最寄駅を調べた。
電車で行くよりも車で行った方が楽だろう。
昼に着くには、と逆算をし、出る時間を決める。
車で1人になれるならそれでいいか、とまたつまらないことを考えて、席を立った。
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自動販売機が連なるちょっとした休憩場所に、1人で行くのが好きだ。
そこは何故だか妙に見晴らしが良く、有名なテーマパークが見える。
テーマパーク、と言っても大層なものではないが、観覧車やメリーゴーランド、ジェットコースターなど、それなりのアトラクションは揃っていた。
コーヒーを飲んで一息つくと、いつも思い出すことがあった。
それは、大学時代のことだった。
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なかなかいい夜景だ。意外といい景色が見える。
高いところは好きじゃないけど、思っていたよりいいものだ。
「なぁ。就職、なんか夢ある？」
向かい合わせで目の前に座る彼は、外を見ながら私に聞いた。
「えー。なんだろう。でもやりがいある仕事はいいよね。憧れるな」
「わかる。自分がどんな仕事向いてるかわからんけど」
その訛りも好きなんだよな、と思いつつ、聞いた。
「君はかっこいいから、どんな仕事でもモノにできそうだよ」
「なんやねんそれ。まず君ってなんやねん。お前本当意味わからんな」
そうやって笑う顔も、好きだ。
「まぁ。お前も上手くやってけるよ。
俺が保証してやる」
.
わたしは、苦しんでいた。
このつまらない毎日の中で、楽しいも、辛いも感じなくなった自分に残された、奇妙な感情だった。
あの頃好きだった、そして今も忘れられない、
廉の笑顔に、
苦しんでいた。
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作者名：ゆみ | 作成日時：2020年6月30日 20時
