金盞花が1輪 ページ8
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山に入り少し歩いた所で木の間から人が現れ。
天狗の面に水色の波模様の羽織が特徴的だ。
僕は声をかけようと1歩近づけば｢止まりなさい｣と静止させられる。
｢幹典が連れてきた子だな｣
｢はい、あなたが鱗滝さんですか？｣
｢左様。儂は�牋藜雖畄�士を育てる者だ｣
｢これからお前が鬼殺の剣士として相応しいか試す、ついて来い｣
鱗滝さんがそう言うと山の奥へと走り出す。
僕は慌ててその後を懸命に追いかけるが、あの人は一体何歳なのだろう。
追いつける気が全くしない。その背を追うので精一杯だ。
どれくらい走っただろう、日は沈み視界が悪い。
走り続けているせいで肺が苦しい、横腹が痛むし喉の奥から鉄の味がする。
前方に灯りの付いた家が見えてきて鱗滝さんがそこの前で待っていた。
｢…こ、れでっ…はぁ…っ…認め、って…ゴホゴホッ｣
｢荷物をここに置いていけ。山へ登る。試されるのはこれからだ｣
立ち止まり呼吸を整えようとしたことで咳き込む。
これから更に山を登るなんて、と思考が一瞬固まったが言われた通り荷物を置こうと戸に手をかける。
だが開けるより先に何故か戸が開く。
｢！｣
｢！…なんだ｣
｢…え、いや。荷物を置かせてほしくて…｣
戸を開けたのは中にいたこの少年らしい。
宍色の髪と口元に傷が目立つ少年と目があう。
僕の言ったことを聞いて少年が手を伸ばしてかた。
｢預かる｣
｢ありがとう｣
背負っていた荷物を渡し、鱗滝さんのところへ戻ろうとしたらトンッと背中を押される。
振り向けば少年は口元を緩ませた。
応援、と受け取るべきなのたまろうか。
こちらも笑みを返し、駆け足で向うと鱗滝さんは更に更に山の奥へと進んで行った。
一刻、いや半刻かもしれない。疲れが出てきたのかどれくらい登ってきたのかも曖昧だ。
日は沈み、夜闇が広がる木々の隙間から差し込む月明かりだけが頼りになるが、霧が濃いせいで霞んで視界が悪い。
突然鱗滝さんが立ち止まり、振り向く。
｢ここから麓の家まで夜明け前に下りてくること、以上だ｣
強い風が吹いたと思えば目の前にいたはずの鱗滝さんが消えていた。
それに驚きつつも、先程言われたことを復唱する。
｢夜明け前に山を下りる…｣
顔を上げれば月は真上辺りまで登っている。
夜明けまでには時間があるが、こんな簡単な試験なわけがない。
何かしらあるだろうと思いながらも落ち着いた足取りで1歩踏み出した。
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作者名：呀弥 | 作成日時：2019年10月26日 3時
