普段通り ページ48
駅員のアナウンスがひっきりなしに響いている。動くのは、だいぶ後みたいだ。
もう9時。そろそろ帰らないとまずい。
タクシーしかないか。
「海人くん、タクシー、乗ろう」
「……はい」
お金はある。最寄り駅前で降りたら誰かに見つかるかも。必死に考えて、乗り換えの駅までにすることにした。
.
駅から少し離れたところでタクシーを捕まえて、2人で乗った。
車内は静かだった。お互いになにも話さず、ただひたすら外を見ていた。
持っていたスマホが、また鳴った。紫耀からだ。出るか躊躇していると、海人くんが投げやりに言った。
「出てくださいよ」
わたしは、電話に出た。
「もしもし」
��やっと出た、今塾なんだけどA問題集置いてってるよ。予習しなくて平気？"
「えっうそ。する。今から取りに行く」
"わかった。鍵俺やるから、まってるね"
「ありがとう」
海人くんの授業の予習をすっかり忘れていた。
今から紫耀に会うのかと思うと、気が重い。
なぜなら、別れるなんて言ってしまったからだ。今日、話すしかない。
「塾、寄って帰るから。先に降りて」
「……いいですね。どんな場所でも、デートになって」
「……別れるつもりだけど」
「本当に、できますか」
運転手が、ミラー越しにこちらを少し見た。
この関係、側から見たら不純だらけだ。
「できないよ。あの人が簡単に離すわけない」
「じゃあ、どうするの」
「もういっそ、俺がばらしましょうか。塾に。俺は先生と付き合ってるって」
「なに馬鹿なこと言ってんの」
「俺が覚悟見せないから、あいつになめられるんだよ」
その言葉は、まるで覚悟を決めているみたいだった。何も言い返せず、ただ沈黙が流れた。
.
「今日、ありがとうございました。
……また明後日」
そう言って海人くんは降りていった。
いつもの味気ない挨拶にさえ、私は愛おしさを感じていた。
.
「やっときたぁ。腹減ったよもう」
「ごめんごめん」
普段通りの紫耀を見て、私は今日切り出すか迷った。
けれど、今日を過ぎれば、もっと言いづらくなるかもしれない。
そう思ったら、腹をくくるしかなかった。
私に付き合おうと言ってくれた日を、思い出していた。
「どうしたの。突っ立って」
なんの疑いもなく向けられたその笑顔が、
こんなに苦く感じるのも、最初で最後だ。
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たぴたん(プロフ) - やばいです！ドツボです！！すっごく好きなお話です!!!更新楽しみにしてます(^^) (2018年11月30日 23時) (
レス) id: 8fdbc6821c (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - さやさん» ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです！少し話自体は長くなりそうなんですが、最後までよろしくお願いします。 (2018年11月25日 11時) (レス) id: 0414dcbdb3 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - はじめまして！これからどうなるの〜\(//∇//)\ 文章が読みやすくスルスル進んじゃいます！早く続きが待ち遠しいです！ (2018年11月25日 10時) (レス) id: e9d59d8006 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ(プロフ) - 花さん» ありがとうございます！経験浅いですが楽しんでいただけてよかったです。今後もぜひ、よろしくお願いします。 (2018年11月21日 13時) (レス) id: 0414dcbdb3 (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - 設定も内容もとってもドキドキして面白いです！海人君はクールでミステリアスさがあって、ルックスは勝手に胸キュンスカッとの中原君で想像してます〜(^^)更新楽しみにしてますね！ (2018年11月21日 10時) (レス) id: 647445b209 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あゆ | 作成日時：2018年8月5日 22時
