91 ページ40
『あの、ココ…?』
ん?と小さく返ってきた返事に、おかわりください。と言えばまたため息が返される。
『あ、ごめん
自分で食べるね…』
その言葉にようやく顔を上げたココは、私が伸ばした手を布団の中に押し込んで無言でお粥をレンゲで掬った。
あー。と言われるがままもう一度口を開ければ、待ち望んだ味が広がる。
もぐもぐと食べる様子をじっと見つめるココを見つめ返せば、何かを言いたそうに口をモゴモゴさせていた。
『ココ?』
「……本当に美味いか?」
『美味しいよ?』
どうして?と首を傾げれば、ホッとした顔をしていたココはまた目を泳がせる。
「り、りょうり…とか、したことなかったから」
今度は私がポカンとした。
「あ、…やっぱ素人が作ったやつじゃ嫌だよな」
シェフ雇うわ。ととんでもないことを言い出して立ちあがろうとするココの腕を掴んで、違う違う。と引き留める。
『つまり…
ココの手料理を食べたのは……私だけってことだよね』
「は?」
『どうしよう…嬉しい』
ふふ。と抑えられない笑みを隠すように口元に手を当てる。
『ありがとね』
その言葉にまたため息を吐きながら項垂れたココは、お前マジで。と呟いた。
『学校まで迎えにきてくれたの?』
あれから復活を遂げたココにご飯を食べさせてもらい、最後の一口を飲み込んで聞けば、あぁ。と短く返される。
「篠崎がAのケータイから俺に電話かけてきてな」
『そうなんだ
お礼言っとかなきゃ』
「鞄持ってくるわ
そろそろ医者も来るだろうが、これ薬な」
手を差し出すとコロコロっと乗せられた2つの錠剤。
そしてコップに入った水。
『ありがとう
風邪薬常備してるのすごいね』
「Aを診せた医者が処方したやつだ」
ココの言葉に、驚きで口に含んだ水を飲み込んだ。
『え!!
病院まで連れて行ってくれたの!?』
「病院は行ってねぇよ」
ほら、鞄。と持ってきてくれた鞄を受け取って、ココの言葉に首を傾げた。
『病院行ってないのにどうやって先生が診るの?
あ、というか今からまた行くんだっけ!』
用意するね!とベッドから出ようとするも、いやいや。と肩を押さえて止められる。
『へ?でも行くんでしょ?』
「行かなくていい
医者が来る」
『え?』
医者が来る?どこに?医者に診てもらうために行く物では?
何一つ理解できないまま、大人しく布団に戻ってココの顔を見つめる。
463人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉兎(プロフ) - えりちゃんさん» 初めまして!コメントありがとうございます☺️ なんと2回目!楽しんでもらえて嬉しい限りです!! これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!✨✨ (6月15日 11時) (レス) id: 51ccdf4ac7 (このIDを非表示/違反報告)
えりちゃん - はじめまして☺️実は読ませてもらうの2回目なんですが、きゅんきゅんが止まりません!毎日の楽しみになっています💕 (6月15日 2時) (レス) @page7 id: 84c92b84c7 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 香恋さん» コメントありがとうございます! はじめまして☺️ 中毒症状出ましたか〜夜更かしまで😂😂 嬉しいコメント励みになります✨ありがとうございます🥰 頑張ります!!💪 (2023年1月29日 20時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - はじめまして!一昨日この作品を見つけて、テンポも良いし面白すぎて読むのが止まりませんでした!読む手が止まらなくて中毒症状出ました笑。面白い展開と文才の凄さに夜通し読んでしまいました!更新楽しみにお待ちしてます😭 (2023年1月29日 13時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - れなさん» コメントありがとうございます!!✨ 嬉しいお言葉感謝感激です!!🥳 地道に下書き進めてますので少しお待ちください!よろしくお願いします☺️ (2023年1月24日 22時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉兎 | 作成日時:2022年10月28日 18時