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んー。と俺の後ろから乗っかかるイヌピーを、よっこいせ。と背負う。
あちらでは溝に吸い寄せられている今牛を荒師が腕を掴んで止めていた。
今牛ってあんなタイプだったか?と思うが、あいつも何か吹っ切れたのかもな。なんて自分と重ねてみる。
「九井!
青宗頼めるか?」
「あぁ」
脱力しているイヌピーを背負い直して荒師に返事をすれば、2軒目だ!と今牛が声を上げた。
「どう考えても無理だろ!
じゃな九井、気をつけて帰れよ」
「そっちもな」
それぞれ逆の方へ足を向けて歩く。
アルコールを摂取していない俺には冬の夜風が心地いいとは思わないが背中に感じる熱に、まぁ。全くわからないわけでもないな。と星の見えない都会の空を見上げた。
実家は田舎だと言ったAの方では星は見えるのだろうか。
とっくに日付を周り、想い人は夢の中だろう。
どうかいい夢を見ていてほしい。
そんな事を自分が思うことになるなんて夢にも思わなかったが、顔を浮かべるだけで暖かくなる心に嘘偽りなどなくて
今度こそ自分の手で守り、幸せにしたいと思いを強くさせた。
.
..
年が明けて三が日が過ぎ、明日帰るよ〜。とAからメールが届いたのは昨日。
Aが乗った電車が到着する時間の30分ほど前から駅で待っている俺の耳に、ココ〜!と待ち望んだ声が届いた。
改札から出てくる人の波の中から大きく振る手だけが見えて思わず吹き出す。
そして人と人の間からひょこっと見えたAは、マフラーを巻いて髪を後ろで束ねていた。
コロコロとキャリーケースを引っ張りながら駆け足でくるAに、自然と頬が緩む。
『ココ〜!お迎えありがとう!
お土産買ってきたよ!これ美味しいの!おすすめ!
こっちはお湯に溶かして飲むやつで、こっちは結構甘いんだけどお茶に合うの!
あとね、こっちはイヌピーの分で』
勢いよく喋りながら手に持った大量の袋を一袋ずつ紹介するAに、待て待て待て。と静止をかけた。
「それはまた後でゆっくり聞くから、まず言うことあるだろ」
Aの肩にかかる髪をサラリと撫でて言えば、不思議そうな顔で俺を見上げるAは、あ!と声を上げた。
『明けましておめでとう!』
パッと花を咲かせたAに、そうきたか。と笑えば、またキョトンと首を傾げる。
そんな仕草も可愛くて、たった数日会わなかっただけで数年経っている気にさせた。
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玉兎(プロフ) - えりちゃんさん» 初めまして!コメントありがとうございます☺️ なんと2回目!楽しんでもらえて嬉しい限りです!! これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!✨✨ (6月15日 11時) (レス) id: 51ccdf4ac7 (このIDを非表示/違反報告)
えりちゃん - はじめまして☺️実は読ませてもらうの2回目なんですが、きゅんきゅんが止まりません!毎日の楽しみになっています💕 (6月15日 2時) (レス) @page7 id: 84c92b84c7 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 香恋さん» コメントありがとうございます! はじめまして☺️ 中毒症状出ましたか〜夜更かしまで😂😂 嬉しいコメント励みになります✨ありがとうございます🥰 頑張ります!!💪 (2023年1月29日 20時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - はじめまして!一昨日この作品を見つけて、テンポも良いし面白すぎて読むのが止まりませんでした!読む手が止まらなくて中毒症状出ました笑。面白い展開と文才の凄さに夜通し読んでしまいました!更新楽しみにお待ちしてます😭 (2023年1月29日 13時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - れなさん» コメントありがとうございます!!✨ 嬉しいお言葉感謝感激です!!🥳 地道に下書き進めてますので少しお待ちください!よろしくお願いします☺️ (2023年1月24日 22時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉兎 | 作成日時:2022年10月28日 18時