ちょっとおかしなキミの金銭感覚【九井一】2

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本人いるだろ。と笑えば、本人は緊張するらしい。


段々と人の多くなってくる中、はぐれないように少し手に力を込めればやんわりと握り返される手にドクンと心臓が跳ねた。




街を彩る色とりどりの光。


チカチカと点滅する灯りに照らされるAの瞳がソレを反射させる。


その様子がどのイルミネーションよりも綺麗で、わぁっと感動を表しているAの瞳を見つめていた。




『綺麗だったね！』



片付け大変だろな〜。とまた少しズレた観点で見ているAにククッと笑いが漏れる。


「疲れてねぇ？平気？」


『人が多いからね
少し座ってもいい？』



もちろん。と返して、触れる場所まで移動する。



「足痛くねぇ？」


『それは平気
低い靴履いてるから

あ、ちょっと待ってて』



そう言って小走りで向かった先は自販機。


その前で財布を出しているAに慌てて後を追いかけた。



「いいよ、俺出す」


『ダメ
これは私が奢るの』



ホットコーヒーでいい？と俺の返事を聞く前にピッと押したAは、落ちてきたコーヒーの缶を俺に差し出した。



それを受け取り、ガコンともう一度出てきた缶を取り出したAに、礼を言う。



『気にしないで
私がそうしたいからしただけ』



いつも通りにっこりと笑って、座ろ！と俺の手を引いて元の位置に戻って座るAは、おしるこの缶を開けた。



「俺それ飲んでるやつ初めて見た」


『うそ！
美味しいのに！！』


飲む？と差し出される缶。


前までは断っていたが、今回はそれを受け取って口をつけた。



缶を傾けると口に流れ込む甘い液体。


「意外と結構おしるこ」


缶ナメてたわ。と感想を伝えながら返せば、なかなか受け取らないAに顔を見る。



赤い顔でパクパクと口を動かしているAがいて、フッと笑った。



「俺が今まで断ってた理由わかったか？」



そう聞けばコクコクと何度も頷いたAは、俺の手から受け取った缶を赤い顔でマジマジと見つめている。



「……飲まねぇの？」



『……飲む


飲む…』





飲むよ。と今からバンジージャンプでもするかのような覚悟の決め方をするAに、悪戯心が湧いた。



両手で持った缶を真剣な顔で見下ろすAの頬に手を当て、へ？とタイミングよく上げられた顔に自分の顔を近付けて触れるだけのキスをした。



柔らかな唇に名残惜しく感じながらゆっくりと顔を離して、呆然としているAを見る。

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