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「A?」
どうした?と伸ばされた手が頬を包む。
顔を持ち上げようとするその手に抵抗するように、フルフルと頭を振った。
「具合悪りぃ?
メシとか気にすんな
お前に何かしてほしくてやったわけじゃねぇから」
な?とココの優しい言葉にジワリと視界が滲む。
『…ごめんなさい』
A?と腰を曲げて顔を覗き込むココと目が合ってしまった。
大きく開かれた切長の目が次第に焦りに変わる。
「A!?
ちょ、まて、なんっ!」
いつ落ちてもおかしくない程溜まった涙。
一度瞬きをすればポロリと簡単に落ちるソレ。
「Aしんどいか?
ベッド戻るか?」
オロオロとしたまま頬を包んで、落ちた涙を親指で拭って聞くココにもう一度頭を振る。
弱った体に心まで弱くなって、無性に自分が情けなく思う。
そんな自分にこんなに優しくしてくれるココに申し訳なくて、何も言わず泣くことしかできなかった。
どうした??と聞くココの声も、ココと同じ匂いのする私の髪を撫でる大きな手も、全てが優しくて愛おしくて、ココの背中に腕を回した。
一瞬動きを止めたけど優しく抱き返してくれるココにまた涙が出る。
「……A、こっち
ソファーに座ろう」
少ししてそう言ってくれた言葉にコクリと頷けば、手を引いてくれる。
ココが座り、その隣に腰掛ける。
「どうした?」
ちょこんと座った私の手を握ったまま、俯く顔を覗き込むココの顔は困り顔。
あぁ、また困らせてる。と思う気持ちがまた涙を作る。
「A??
泣かなくていいから、ゆっくり言ってみろ」
連日のバイトと学校での出来事に知らず知らずのうちに限界が来ていたらしく、ボロボロの心がココの優しさで救われていく。
『……迷惑かけて、ごめんなさい』
「迷惑?」
手を握り、もう片方の手で涙を拭いてそのまま顔を持ち上げられる。
「迷惑なんて1ミリも思ってねぇよ
俺が一言でもそう言ったか?」
呆れたように笑いながら言うその声は落ち着く低さで深く優しい。
『…言ってない……けど、』
「けど?」
いつもなら多分聞き流すであろう言葉を拾ったココは、片眉を上げてちょっとだけ意地悪な顔をしている。
『けど…私バカだし、鈍臭いし、周り見てないし、後先考えないし……』
指を折りながら紡いでいく言葉をココは黙って聞いている。
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玉兎(プロフ) - えりちゃんさん» 初めまして!コメントありがとうございます☺️ なんと2回目!楽しんでもらえて嬉しい限りです!! これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!✨✨ (6月15日 11時) (レス) id: 51ccdf4ac7 (このIDを非表示/違反報告)
えりちゃん - はじめまして☺️実は読ませてもらうの2回目なんですが、きゅんきゅんが止まりません!毎日の楽しみになっています💕 (6月15日 2時) (レス) @page7 id: 84c92b84c7 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 香恋さん» コメントありがとうございます! はじめまして☺️ 中毒症状出ましたか〜夜更かしまで😂😂 嬉しいコメント励みになります✨ありがとうございます🥰 頑張ります!!💪 (2023年1月29日 20時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - はじめまして!一昨日この作品を見つけて、テンポも良いし面白すぎて読むのが止まりませんでした!読む手が止まらなくて中毒症状出ました笑。面白い展開と文才の凄さに夜通し読んでしまいました!更新楽しみにお待ちしてます😭 (2023年1月29日 13時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - れなさん» コメントありがとうございます!!✨ 嬉しいお言葉感謝感激です!!🥳 地道に下書き進めてますので少しお待ちください!よろしくお願いします☺️ (2023年1月24日 22時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉兎 | 作成日時:2022年10月28日 18時