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Aが就職して半年が経った。
毎日働きに出ては定時を過ぎて帰ってくる。
遅すぎる事はないが、疲れが顔に出ている。
夏はまだ薄明るいが、冬になれば真っ暗だ。
「帰り迎えにいこうか？」
そろそろ暗いし…。そう言って毎日玄関先で送り出すが、返ってくる言葉は
『ありがとう
でも何時になるかわからないから大丈夫だよ』
だ。
就職しだして2週間程は職場まで送っていた。
が、ある日いつも通り靴を履こうとしていた俺に、子供じゃないから大丈夫。と。今日からは1人で行く。と言ってきた。
理由を聞いても少し困ったように笑い、行ってきます。とAからキスをされた。
まるで何も言わないで。と言われているようで、Aが帰ってからもその事には触れられなかった。
それからは玄関先で見送る日々だ。
夜8時が過ぎた頃になって、ガチャっと鍵の開く音が聞こえて玄関に向かう。
パチッと電気をつければ、鞄をかけた腕を壁について俯きながら靴のストラップを外すAの髪がゆらゆらと揺れていた。
「おかえり」
『ただいま』
顔を上げたAから鞄を受け取って、お疲れ様。と髪を耳にかけてやる。
パチッと外れたストラップにコトリと床に置かれる靴。
俺が贈ったもの。
このバッグも服も。
そろそろ着るであろうコートも、つける予定のマフラーも。
今日は天ぷらだよ。と言いながら洗面所へ向かったAに、昨夜から冷蔵庫で眠っている殻の剥かれた海老や、すでに切られているレンコンやカボチャを思い出す。
手を洗って服を着替えに行った間に、それらを冷蔵庫から出してカウンターに並べればかなりの量だ。
取り皿やお箸をテーブルに並べながら、キッチンに入ってきたAを見る。
『あ、出してくれてたの？ありがとう』
帰ってきて早々にこの量を今から揚げるのだから大変だろうに、嫌な顔ひとつせずニコニコとしてくれるA。
天ぷら粉に水を溶いてバッター液を作るAの横に立ち、俺もやるよ。と袖を捲る。
『お、ココ料理長の特製天ぷらですね？
じゃ私粉つけて行くから、液につけて揚げていってね』
こうして並んで料理をすることも少なくないが、時たま腕に当たるAの肩や、つまみ食いをしていたり、俺の口に運んできたりするこの時間が好きだったりする。
『天ぷらはね、作ってる人の特権で揚げたてが食べれるんだよ』
と言ってまたパクリと食べた。
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ニック(プロフ) - めちゃめちゃ面白くて読むの４回目くらいです！！！彼氏がこの作品読んでココみたく優しい彼氏になりますように。 (1月31日 17時) (
レス) id: 5c83f0ecd6 (このIDを非表示/違反報告)
SELENE(プロフ) - 最高最高最高最高最高最高最高でした🥺途中から小説と現実の区別がつかないくらいお話に入り込んでました…。途中途中、何度もサイレントで叫びまくりました。素敵なお話をありがとうございました❣️ (1月30日 15時) (レス) @page47 id: def6971c7c (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - むーこさん» コメントありがとうございます！✨そう言っていただけるととても嬉しいです😭😭 お気遣いまでしていただいてありがとうございます！これからもどうぞよろしくお願いします🥰p.s やっぱイヌココには幸せになって欲しいですものね✨ (12月13日 9時) (レス) id: ddae56ab6c (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - p.s カナちゃんとイヌピーくんくっついてくれて嬉しかったです！ (12月12日 23時) (レス) @page47 id: 612ac16389 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 完結本当におめでとうございます！玉兎さんのお話しを読んでいると心がぽかぽかします！文章と表現がすごく綺麗でキャラクターや小説への愛が伝わってきます。日々色々あると思いますが、体に気をつけて次回作も無理せず書いてください‼︎ (12月12日 23時) (レス) @page47 id: 612ac16389 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉兎
| 作成日時：2023年2月16日 11時
