「君は悪くない」6

295.リアコ（キム・テレ） ページ48

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「テレはこの曲ほんとに似合うよね。リアコだから」

「リアコ……」


 ナナ兄さんにそんなことを言われるとは思わず、ちょっとびっくりする。


「優しくて低い歌声もだけど……何よりテレってカメラじゃなく、聴いてる人に笑顔を向けて歌ってるでしょ。まるで聴いてる人に直接語りかけるような。そういうの、ファンからしたらずるいと思うんだよね。リアコだし初恋だなーって」

「あ……確かに今回は聴いてる人を見て歌おうって意識してました」

「やっぱり意識してたんだ。ベクドアの時よりめちゃくちゃ目が合うなーって中間発表のとき思ったんだよね。すごいね、よく考えてるね」

「ありがとうございます。実は……この歌い方、ヨンジュさんを参考にしたんです」


 ヨンジュさんの名前を出すと、ナナ兄さんがぱちりと目を瞬かせてから「……ヨンジュ？」と聞き返してきた。それに俺は頷く。



「古くさい歌い方を直さなきゃってとにかく練習してたんですけど……オリジナル以外も参考になるかもしれないし色々聴いてみようって思い付いて。それでYouTubeで調べてみたら、ヨンジュさんのが出てきたんです」

「そんな動画あったっけ？ ブイラの切り抜き？」

「いや、そうじゃなくて。ヨンジュさんが出てたバラエティの……」

「あ。あれか、ヨンジュが公開カラオケ対決することになったやつ」


 ナナ兄さんの言った通り、俺が見たのはヨンジュさんが後にレギュラー出演することになるバラエティ番組で、新人アイドルのヨンジュさんが歌うまタレントとカラオケバトルをしたときの動画だった。


「なんだっけ、リードラッパーでサブボーカルだからあんまり歌は得意じゃないだろーって感じで煽られて、じゃあ対決しましょうって流れだったよね。それでヨンジュが一回デビュー曲の『Start Over』を歌って高得点を出したんだけど、自分のグループの曲が上手く歌えるのは当たり前だって相手の方に言われて。だから代わりにナムジャガサランハルテを歌ったんだけど、そこで満点出しちゃったんだよね。なんで持ち曲より点数高いの、というか全然サブボーカルじゃないじゃん！って出演者の方に総ツッコミされたのに、ヨンジュが『他のグループだったらメボ張れますけど？』って得意げな顔して……。
撮り高が良かったからなのかな、本当はその回だけのゲストだったのに、その後にレギュラーのオファーが来たんだよね」

 くすくすと笑いながら、ナナ兄さんは楽しそうに話した。





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