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294.バラード向き(キム・テレ) ページ47





「あ、そうだ。ナナ兄さんまだ時間あります?」

 しばらくして落ち着いたらしいナナ兄さんがまた顔を上げて。ふと俺がそう聞くと、ナナ兄さんは不思議そうな顔をする。


「ん? 別にあるけど……どうしたの?」

「いや、せっかくだしナナ兄さんにボーカル見て欲しいなって。俺達チームも練習室も違うからなかなか機会ないじゃないですか」

「ああ……でも中間発表のとき直すとこないくらい上手かったよ? あのままでいいんじゃないかな」

「本当ですか?」


 聞き返すと、ナナ兄さんは「うん」と頷いた。


「お世話じゃなく、すごく良かったよ。……あ、でも、聴かせてくれるならまた聴きたいなあ。アドバイスするため、よりは純粋に聴きたいだけなんだけど」

「それでいいんで聴いてくださいよ」

「分かった。ありがとう」


 えー、なんか得しちゃったな、そうにこにこ笑うナナ兄さん。得をしてるのはこっちの方だ。練習室に住んでるんじゃないかって言われてしまうくらい練習の鬼なナナ兄さんが、雑談に付き合ってくれた上、ボーカルまで見てくれるのだから。
 そう思うと申し訳ない気持ちも生まれるけれど、最初に自分の様子を見に来たのはナナ兄さんだし、ナナ兄さんと同じチームのジョンウ兄さんが「ナナが休まず練習室に引きこもっててさー、俺がそろそろ休憩しろとかもう寝ろとか言っても聞かないんだよ。最終的に引きずってくけどさあ」と愚痴を漏らしていたからちょうどいい気がした。





「……やっぱり上手いなあ」

 一通り歌った後、ナナ兄さんが笑顔で言った。嘘や誤魔化しが全く無いようなその反応に、思わずほっとする。


「テレって深くて広くて柔らかい歌声だから、バラード向きだなあって思ってたんだけど……段々変わってきてるよね。ポップスも違和感ないよ」

「良かった。先生達にも言われたんです、自分はバラード向けの声なんだって。ため気味でしゃくりが長すぎるすぎるからもう少し爽やかに歌ってほしい、特に歌い出しが古くさい、って指摘されたから、そこを中心に練習しました」

「古くさいは言い過ぎな気がするけれど……でも、指摘された上でこれならすごく成長したってことだよね。頑張ったね。……あと、改めてテレの声ってソクフン先生に似てるよね。ソクフン先生の曲歌ったら聴き分けられないかも」

「似てるってのは嬉しいですけど、流石に分かりますよ」


 顔も似てるし、と冗談っぽく笑うナナ兄さんにつられ、俺も笑った。





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アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» いつもコメントありがとうございます! 更新してすぐ読んで頂いて本当に嬉しいです。書いてる自分もしんどいな……と思っているので、早く明るいシーンまで行きたいなとなってます……🥲 これからも更新頑張るのでぜひよろしくお願いいたします。 (8月4日 3時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みました!思わず、ナナー!!!!って叫んじゃいました😭アップルパイさんの小説大好きなのでこれからも更新楽しみにしています💘 (8月2日 7時) (レス) @page22 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年7月24日 22時

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