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291.自然な笑顔(キム・テレ) ページ44





「あ、ナナ兄さん」

「ごめんテレ。邪魔した?」


 中間発表の日の夜。もらったフィードバックを参考にひとり練習していたら、練習室の扉が開けられる音がして。歌っていたのを中断して振り返ると、そこにはナナ兄さんがいた。びっくりしながら「全然。休憩ですか?」と聞くと、ナナ兄さんは「ちょっとトイレにね」と苦笑いしながら頷く。


「それで、練習室に戻る途中でテレの歌声が聞こえてきたから思わず見に来ちゃった」

「そんな聴こえてました?」

「うん、ばっちり。キムテレの声ってほんと通るよね」

「えー、なんか恥ずかしいんですけど」


 ピースをしながら何処か得意げな顔するナナ兄さん。若干の気恥しさを覚えながらそう返すと、ナナ兄さんは「ごめんって」と目を細め楽しそうに笑った。



(……やっぱり、ナナ兄さんはこういう笑顔の方がいいな)

 ふと思う。華奢で女性のような見た目を気にしているのか、ナナ兄さんは「かわいい」とか「綺麗」と言われるのがあまり好きじゃないみたいで。だから「今の笑顔の方がかわいいですよ」なんて言ったら、きっと「それ……褒めてるの?」とナナ兄さんは困った顔をしてしまうだろう。


「ナナ兄さんって、自然に笑うようになりましたよね」

「うん?……それ、前の笑顔は不自然だったってこと?」


 かわいい、の代わりにそう言うと、ナナ兄さんは不思議そうにぱちりと瞬きをした。それから自分の頬を両手で抑えながら、「ちゃんと笑ってると思ったんだけどな……」と眉を下げて少ししょんぼりとした顔をして。それに俺は「あ、そうじゃなくて」と首を振った。ナナ兄さんが作り笑いをしていたとか、そういう意味で言ったわけじゃなかった。


「前は静かに微笑んでるって感じだったから。今は割ところころ表情が変わるようになったから、見てて楽しいです」

「そう? 確かに前よりは表情を抑えなくなったかも……」

「やっぱり抑えてたんですね」

「まあ……カメラの前だしね。キャラ的に無駄な感情は隠さなきゃいけないって意識がずっとあるし、意識しすぎて最早無意識にやってるんだよね。今は化けの皮が剥がれたというか、みんなと一緒にいるうちに素が出てきちゃったのかな」


 化けの皮。そのワードに思わず吹き出しながら、ナナ兄さんが俺達と過ごしているうちに素が出てきたというのは嬉しかった。だから「良くないなあ」と反省するように呟くナナ兄さんに、「そんなことないですよ」と返した。





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アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» いつもコメントありがとうございます! 更新してすぐ読んで頂いて本当に嬉しいです。書いてる自分もしんどいな……と思っているので、早く明るいシーンまで行きたいなとなってます……🥲 これからも更新頑張るのでぜひよろしくお願いいたします。 (8月4日 3時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みました!思わず、ナナー!!!!って叫んじゃいました😭アップルパイさんの小説大好きなのでこれからも更新楽しみにしています💘 (8月2日 7時) (レス) @page22 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年7月24日 22時

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