検索窓
今日:35 hit、昨日:48 hit、合計:86,269 hit

290.料理 ページ43





「へー、ヨンジュさんって料理出来たんだな」

 流石「国民の彼氏」。感心したようにジョンウ兄さんが言う。確かに眩しいくらいに顔が整っていて、スタイルが良くて、性格が明るくて、その上料理も出来るなんて。まるでドラマや漫画に出てくる完璧彼氏だ。こういうの、スパダリって言うんだっけ。


「はい。ご両親が共働きで帰りが遅かったらしいし、ヨンジュって一人っ子だったから小さい頃から家の事はやり慣れてたみたいで。だからヨンジュの作る料理はすごく美味しかったし、いつも楽しみで。ものすごく凝った料理とか、初めて名前を聞くような珍しい料理とか、わざわざ調べてくれた日本の料理とか、色々作ってくれたけれど……テジクッパが一番好きでした」

 テジは日本語で「豚」、クッパは「スープご飯」。つまりテジクッパは豚肉を煮込んだスープご飯のことで、ヨンジュが生まれた釜山の郷土料理だった。


「ヨンジュの実家に初めて行ったとき、ヨンジュのお母さんがテジクッパを振舞ってくださったんですけど……その時の味と全く一緒だったんです。おふくろの味って言うんですかね、そういうの素敵だなって。だから好きだったんです。……また、食べたいな」

 また食べたい。つい言葉にしてしまったことで、それがもう二度と叶うことはないと実感させられ胸がきゅっと締め付けられる。ヨンジュはもういないし、ヨンジュのご両親に顔を合わせる資格だってないのだ。




「作ってもらうばっかじゃなく、レシピ聞いておけば良かったですよねー。まあ、レシピが分かってても俺じゃ再現できるか分からないんですけど」

 暗い内心を悟られないよう、明るい口調でそう言う。


「逆にナナは料理できないの?」

「あんまり慣れてなくて……わざわざ料理するくらいなら携行食とかでいいかなあって思っちゃうんです。あと昔お母さんの料理の手伝いをしたら、『あなたは包丁を持たないで』って言われて。その時はまだ自分が子供だからそう言われたんだと思ってたんですけど、同じようなことをヨンジュや兄さん達にも言われたんですよね。包丁は絶対に持たないで、ハサミ以外の刃物も使わないでって。どうしてかよく分からないんですけど」

「あー……なんとなくわかった。逆に持たせたくなってきたな」

「逆に……?」


 どういうことだろう。思わず首を傾げる私に、ジョンウ兄さんは「ナナってなんでも出来そうだけど、できないこともあるんだな」と楽しそうに笑った。





291.自然な笑顔(キム・テレ)→←289.好きな食べ物



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (185 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1852人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» いつもコメントありがとうございます! 更新してすぐ読んで頂いて本当に嬉しいです。書いてる自分もしんどいな……と思っているので、早く明るいシーンまで行きたいなとなってます……🥲 これからも更新頑張るのでぜひよろしくお願いいたします。 (8月4日 3時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みました!思わず、ナナー!!!!って叫んじゃいました😭アップルパイさんの小説大好きなのでこれからも更新楽しみにしています💘 (8月2日 7時) (レス) @page22 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年7月24日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。