285.今の自分なら（チ・ユンソ） ページ38
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「編曲しようとすると、この曲が作られた裏側とか込められた思いとか色々気にしちゃってさ。本当に自分達の見栄えのためだけにこんなアレンジをしていいか悩んじゃうの。でも『Home』って自分が作るのに関わった曲だったから、あんまり罪悪感が湧かなくて。むしろこの曲は……」
そこまで言って、ナナ兄さんは一瞬だけ視線を落とす。そして顔を上げて「何よりさ、『Home』は俺が実際にカバーしたことあるから」とまた話し始めた。
「俺はそんなつもりなかったけれど、あの時とは違うステージを作らなきゃいけないって、変わった姿を見せなきゃいけないって、そんな思いでらしくもなくあんなにオリジナルと違うものを作ったんだなって。……トレーニングが始まる前、ユンソとホンハイとで俺とヨンジュのMCステージ見たでしょ？ その時に急に気づいたの。この編曲はチームのためじゃなく、俺が自分のために勝手にやったものなんだって。本当にこのままでいいのかって、でもだからといってオリジナルのままやって良いステージが作れるのかって、そればっかり考えちゃって……そのせいでトレーニングではひどいパフォーマンスしちゃった」
ごめんね、ナナ兄さんが申し訳なさそうに呟く。
きっと、先生達がナナ兄さんに指摘していた「集中していなかった」、「迷いがあった」というのはこれが原因だったのだろう。僕とホンハイがナナ兄さんとヨンジュさんのMCステージを再生していた時、ナナ兄さんは全く気にしてなさそうに、むしろ微笑みながら僕達と一緒に見ていたけれど、内心は穏やかじゃなかったのだと。今更気づいて冷や汗が出てきた。
「えっ、じゃあナナ兄さんが集中できなかったのって普通に僕達のせいじゃないですか……？」
「僕達が呑気にMCステージなんて見るから……」
「いや、全然そんなことないよ。俺の元々の問題でユンソとホンハイのせいじゃないし、むしろ二人のおかげで大事なことに気づけたから。ありがとう」
そう言ってナナ兄さんは小さく息をついて。それから微笑んだ。
「曲を大きく変えなくても、"今の自分"なら昔とは違う、もっとこの曲らしいパフォーマンスができるはずだから。だから編曲は直すよ。なるべくオリジナルと変えずに、でも俺達全員の雰囲気に合ったものになるように」
ナナ兄さんが言った「今の自分なら」という言葉が、想像以上にナナ兄さんにとって意味があるものだということに。僕達は気づけないまま、ただ頷いた。
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アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» いつもコメントありがとうございます！ 更新してすぐ読んで頂いて本当に嬉しいです。書いてる自分もしんどいな……と思っているので、早く明るいシーンまで行きたいなとなってます……🥲 これからも更新頑張るのでぜひよろしくお願いいたします。 (8月4日 3時) (
レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みました！思わず、ナナー！！！！って叫んじゃいました😭アップルパイさんの小説大好きなのでこれからも更新楽しみにしています💘 (8月2日 7時) (レス) @page22 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アップルパイ | 作成日時：2023年7月24日 22時
