251.偶然 ページ4
・
(……どうして、この曲が)
周りにいるみんなもそう思ったのか、一気に視線が私に集まって。その刺さるような痛みを誤魔化すように、私は口の中を噛んだ。
SEVENTEEN先輩の『Home』。この曲は。
「この曲は……ナナ練習生が制作に携わった曲ですね」
「……はい。懐かしいですね」
ミニョク先輩が申し訳なさそうにそう聞いてくるから、私は笑顔をつくって返した。ミニョク先輩は悪くない。きっとこれは用意された台本に書いてあることで、それをミニョク先輩は読まされているだけだ。そもそも、課題曲に練習生が関わっていたのなら、それに触れるのは別におかしなことじゃない。
(でも……こんな偶然、有り得る？)
確かにこの曲はウジ先輩と一緒につくった、私がN͜͡umber以外に書いた唯一の曲。そして、私とヨンジュがN͜͡umberとして最後にパフォーマンスをした曲だ。
一緒に曲を作りたいとウジ先輩が誘ってくれたこと、歌詞に悩んでいたらウジ先輩が助けてくれたこと、出来上がった歌詞にウジ先輩を始めとしたSEVENTEENの皆さんが喜んでくださったこと。その曲をヨンジュとのMCステージで披露して、沢山の人が反応して下さったこと。そんな大切な思い出が頭に過ぎりながら、そう思う。
まるで抜け穴をつくようだった。参加者にフェテク兄さんがいるというのに、スターレベルテストのときにPENTAGON先輩の『Shine(빛나리)』を課題曲に選んだように。ナナが参加者にいるならN͜͡umberの曲を使いたかったけれど、N͜͡umberやミンジュン兄さんの曲を課題曲に使わないという条件があったから、仕方なくこの曲を選んだかのような。そんな、私やファンの心情よりも番組の撮り高を優先したいような、悪意に近いものを感じてしまう。だって、グループバトルで既にSEVENTEEN先輩の曲は使っているのに、ポジションバトルでもまた使うのは不自然だった。BTS先輩も同じだとしても。
(……気持ち悪い、)
もしかしたら『Man In Love』も偶然じゃなく、あえて課題曲に選んだんじゃないか。私の悲劇を引き立たせるために。
ついそう考えてしまって、じわじわと心臓が締め付けられ、喉が詰まったような気分になる。
「作詞者本人が居るといことで、この曲を披露する練習生は緊張するでしょうね」
「あはは……あくまでSEVENTEEN先輩の曲なので」
それに今、自分はただの練習生ですから。
胃液が上がってくるのをぐっと我慢して、私は変わらず笑った。
・
252.悲劇のステージ（ユン・ジョンウ）→←250.嫌な予感
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1852人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» いつもコメントありがとうございます！ 更新してすぐ読んで頂いて本当に嬉しいです。書いてる自分もしんどいな……と思っているので、早く明るいシーンまで行きたいなとなってます……🥲 これからも更新頑張るのでぜひよろしくお願いいたします。 (8月4日 3時) (
レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みました！思わず、ナナー！！！！って叫んじゃいました😭アップルパイさんの小説大好きなのでこれからも更新楽しみにしています💘 (8月2日 7時) (レス) @page22 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アップルパイ | 作成日時：2023年7月24日 22時
