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271.嘘 ページ24





「あ、ハンビンおはよう」

 朝食が乗ったお盆を持って、何処に座ろうか考えていたら。同じようにお盆を持ったハンビンを見つけたから、そう話しかけて笑顔を見せた。けど。


「……あっ、ナナ……おは、よ?」

「…………ハンビン、どうしたの? 俺なんかした?」


 私が近付くと、何故か少し後退るハンビン。表情も笑ってはいるけれど、何だかぎこちない。いつもだったら「チームが違って中々会えないし、朝ごはんくらいは一緒に食べよう!」とか言って、ハンビンから明るい笑顔で駆け寄ってくれるくらいなのに。一体どうしたのだろう。
 何だか向けられている視線も、ちょっと下というか、顔じゃなくて——。そう思い自分も目線を下げようとすると、ハンビンが焦ったように「ナナは何もしてないよ!」と声を上げた。



「……ただ、ちょっと風邪気味というか。ナナに移したら悪いなって!」

「え、大丈夫? 風邪薬持ってるからあとで渡そうか?」

「だっ、大丈夫! そんな重いやつじゃないから。ナナは気にしないで」


(……嘘、だ)

 ハンビンは、私に嘘をついている。そう思った。たぶん、ハンビンは風邪気味とかそういうのじゃない。もちろんハンビンの体調が悪くない方がいいけれど、どうしてハンビンがわざわざ私にそんな嘘をついているのかが不思議で堪らなかった。前に話したときはこんな風じゃなかったのに、どうして。



「……そっか。でも必要になったら気にせず言ってね。これからひどくなるかもしれないし。……まあ、フェテク兄さんやジャンハオ兄さんが居るから俺が心配するまでもないと思うけど」

 でも。嘘ばかりの自分が、ハンビンのたったひとつの嘘を指摘するのも変な気がして。
 だから私は気づかない振りをして、笑顔でそう返した。ハンビンがその言葉にほっとしているのを見ながら、何故だか胸がちくりと痛む。




「ハンビンはトムボーイのみんなと食べるよね? ……じゃあ、またね。練習も頑張って」

「……ありがとう、ナナも頑張って。……あっ、ナナ、」

「うん?」

「……もっとたくさんご飯食べてね」


 掛けられた言葉に、なんだそれ、と瞬きをする。そしてふと自分の持っているお盆を見た。普段よりもさらに減らしてもらったそれ。


「あはは、そうだね。……次からちゃんと食べるよ。ごめん、ありがとう」

 やっぱり自分がハンビンに嘘をつかれて悲しく思うのは変だ。そう思って、自分の感情を誤魔化すように私は笑った。





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アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» いつもコメントありがとうございます! 更新してすぐ読んで頂いて本当に嬉しいです。書いてる自分もしんどいな……と思っているので、早く明るいシーンまで行きたいなとなってます……🥲 これからも更新頑張るのでぜひよろしくお願いいたします。 (8月4日 3時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みました!思わず、ナナー!!!!って叫んじゃいました😭アップルパイさんの小説大好きなのでこれからも更新楽しみにしています💘 (8月2日 7時) (レス) @page22 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年7月24日 22時

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