264.止まった演奏(ユ・スンオン) ページ17
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(やっぱり、『milky way』はイントロからすっごく綺麗だな……)
社会現象になるほど売れる曲というのは、イントロからもう違う。改めてそう思う。自分も初めて『milky way』のMVを見た時、再生した瞬間に衝撃が走ったんだった。
夜空に星が煌めいて流れていくような、何処か切なくて疾走感のあるメロディー。それに合わせて、暗闇の中、光に照らされたナナ兄さんがそっと目を開ける。眩しさに一瞬だけ目を伏せてから、光を……輝くステージをまっすぐ見上げて。一筋の涙を流したナナ兄さんは、そして——。
(……あれ?)
そこまで頭に浮かべて。同時にナナ兄さんが歌い出すと思いきや、ぴたりと演奏が止まる。いきなりどうしたのだろう、ナナ兄さんの生『milky way』聴きたかったなと困惑しながらも残念に思っていると、ナナ兄さんは立ち上がって振り返った。あくびをしていたのだろうか(当たり前のように一番早く起きて一番遅く寝ているナナ兄さんがあくびをする姿は全く想像できないけれど)、口元を手で押さえていたナナ兄さんは僕を見て、大きく目を見開いた。
「……え、……スンオン……? ……び、びっくりした、どうしたの?」
「ナナ兄さんがなかなか帰ってこないから、様子を見に来たんですけど……」
「うそ、全然気づかなかった。……ごめんね、わざわざ来てくれたのに」
「全然大丈夫ですよ。ナナ兄さんすごく集中してましたもんね。……まだ終わらなそうですか?」
まだやりたいことあるからもうちょっと、なんて言われたらどうしよう。本当にジョンウ兄さんに抱えてもらうことになるかも。そう思いながらおそるおそる聞けば、ナナ兄さんは首を振ってから「大丈夫だよ」と小さく笑った。
「おかげで一通り形になったから。明日みんなに確認してもらうね」
「良かった。じゃあ明日楽しみにしてます」
「うん。まだちょっと変わるかもしれないけれどよろしくね。……あ、それよりも……」
「それよりも?」
首を傾げる僕に、ナナ兄さんは眉を下げる。
「……トイレ行ってもいい? ちょっと、限界で……」
「あっ、だから……すみません、引き止めちゃって。僕片付けしてるので早く行ってきてください」
「こっちこそごめんね。ありがとう、すぐ戻ってくるから」
突然『milky way』の演奏を止めて部屋を出て行こうとしたことに納得しながら言えば、ナナ兄さんは恥ずかしそうに苦笑いをして。それから駆け足で部屋を出ていった。
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アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» いつもコメントありがとうございます! 更新してすぐ読んで頂いて本当に嬉しいです。書いてる自分もしんどいな……と思っているので、早く明るいシーンまで行きたいなとなってます……🥲 これからも更新頑張るのでぜひよろしくお願いいたします。 (8月4日 3時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みました!思わず、ナナー!!!!って叫んじゃいました😭アップルパイさんの小説大好きなのでこれからも更新楽しみにしています💘 (8月2日 7時) (レス) @page22 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年7月24日 22時