【WT】君が笑える未来がいい (ページ8)

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6.「眼光」ページ8

それからまた暫くして開発室の手伝いの帰り、人気のない通路。
そこにモッズコートに身を包んだ小柄な男性、恐らく風間さんが壁にもたれて立っていた。

最初は人を待っているのかと思ったがこの辺りは開発室の施設しかなく戦闘員が主に使用する施設からは離れているし、風間隊が隠密戦闘部隊として確立してからというもの試作トリガーにあまり関心がないとも聞く。

じゃあなんで？

嫌な予感がしつつも通り道はひとつしかない。覚悟を決め通り過ぎようとした刹那、目が合った。茜色の鋭い眼光に射抜かれ、足が止まる。

この人の目的は自分だと、悟った。

「迅が風刃を手放した」

「……知って、ます」

動揺で瞳が大きく揺れたのが自分でも分かる。次にどんな言葉が投げられるか想像するのも怖くて風間さんの顔が見れない。

「次の所持者として俺の名が上がったが辞退した」

話が続くのと比例するように私の目線も下へ下へと下がっていく。

「玉狛所属とはいえ、お前の名前も一候補として挙がっているぞ」

「そう、ですか」

無機質な床にたどり着いた視線が行き場をなくし彷徨う。

「これからいったいどうするつもりだ」

「……」

上手い返事が思い浮かばなかった。

いつまで経ってもはっきりとした返事をしない私に呆れたのか、頭上でため息が聞こえた。肩がピクリと跳ねる。

「…近々大規模侵攻が起こるというのは知っているか」

全く予測していない話題に心臓が大きく波打ち、喉がヒュッと音を鳴らす。

知らない、そんなの。私は何も聞いてない。
今すぐにでも耳を塞いで逃げたい衝動に駆られた。

でも体は動かなくて、震えた否定の言葉を喉からひねり出すだけで精一杯だった。

「お前1人が野垂れ死ぬつもりなら俺はそれで構わないが、そのままでは迅も後輩も全員死ぬぞ」

失望の色を浮かべてどこか残念そうに、けれど私の全てを踏みにじるように容赦なく投げられた言葉が深く突き刺さる。

息が、止まるかと思った。

「なんのためにボーダーにいるのかよく見つめ直せ」

「わた、しは」

いったいどうしたら。

「読み逃がした」と切迫した声で呟いて舌打ちを零したのは