【WT】君が笑える未来がいい (ページ14)

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12「対照」ページ14

レイジさんはこちらを一瞥すると、観念したようにぽつりと呟いた。

「きのう同期連中と飲みに行ったんだが、お前が無茶しないように監視しろと風間から言われてな」

「無茶なんて別にーー」

「俺が止めなかったら寝食もろくにとらず訓練室に籠るつもりだっただろ」

完全に図星である。遮るように発された言葉に何も言い返せず黙り込む。あの冷静沈着な大男がそれを見過ごすわけもなく、追い打ちをかけるように「それを無茶だと言うんだ」と小言と零した。

「でもっ」

でも、それでも。

そうするしかないじゃないか。
そうでもしないと私は強くなれないし、今のままでは大事な同僚達が死んでしまうかもしれない。それが酷く恐ろしくて仕方がない。他にどうしろと。どうやったら私は強くなれるというのだ。

「それにお前は、知っているだろう」

その末路を、無慈悲さを。

吐き出すように紡がれたその言の葉に思わず体が固まる。稚拙な言い訳は不発に終わり、喉の奥底へと沈みこんでいく。声を失った私はただ瞠目するしかなかった。

「頼むからあまり生き急ぐな」

嗚呼、この人は多くの戦友を失ったあの戦い(5年前)のことを言っているのだ。そして、私の師の最期のことも。

困ったような怒ったような、色々な感情を混ぜ合わせた顔。優しいけれど厳格なその人の初めて見る面差しに反論なんて出来るわけがない。

「…わかった。無茶はもう、しない」

だからどうか形見を返してくれとはどうしても言えなかった。師はそんな私をどう思うのだろう。迅はいったいどんな思いで風刃を預けたのだろう。

自らの意思で形見を手放した彼と、取り上げられてしまった私。どこまでも対照的でそれが無性に泣きたくなった。