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一颯くんはしばらくごろごろ転がっていたけど、少しして身を起こした。
「あ……生き返った」
「死んでません!」
一颯くんは改めてソファに座る。
「で……名前、なんだっけ?」
「あ……Aです」
「んーと……Aちゃんって呼んでいい?」
「どうぞどうぞ」
……御屋敷中のメイドさんがみんなひそかに恋してるイケメン庭師にピッタリ。
甘い顔で、幼なじみだったお嬢様と禁断の恋に落ちるの。
楽しい世界だぁ……。
「結弦と同じ年だよね?」
「うん」
「じゃあ俺とも同い年」
「ええー……若く見えますね!」
「それは俺は喜んでいい?」
「もちろん! ジャニーズに入ったらグループナンバーワンにはなれそう!」
「マジで〜!?言い過ぎじゃない?」
うん、言い過ぎたかなと思ったけど……、一颯くんは嬉しそうに照れているから黙っておいた。
「部活とかやってんの?」
「ん〜……特には。一颯くんは?」
「俺はやってないね〜」
「いい若者が帰宅部ですか」
「いやそれそっちもじゃん」
なんだか……不思議な気分だった。
羽生くんは私のことを、ほとんど尋ねてきたりしなかったから。
どこに住んでるかとか。家族構成とか。学校のこととか。
そして私も、羽生くんにそういうことを聞いてないことに気付いた。
一颯くんとする会話は……羽生くんとのようにテンポのいいノリとか笑える楽しさはなかったけど……穏やかに、楽しかった。
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作者名:mirin | 作成日時:2020年4月5日 17時