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羽生くんからそのメールがきたのは、私たちが名前を教えあったあの日から、ちょうど一週間がたった日だった。
私は、自分の部屋で前髪を切ろうと鏡とハサミを準備して、いざ行かん!と意気込んでいた。
そのとき、メールの着信音が間抜けな音をたてた。
ぴっぴっぴるぴら〜♪
メールだ……。とりあえずハサミを置いて、携帯を開く。
お……羽生くんからだ。
私たちはあの日以来、少しずつだけどメールしていた。
これからゆっくり距離を縮めていこうと……そう思っていた矢先だった。
[受信:羽生結弦]
いきなりで悪いんだけど、Aさんのこと好きになった。
会ったばっかりでって思うかもしれないけど、付き合ってください。
私は携帯を持ったまま、固まっていた。
どんどん顔が赤くなるのが、自分でよくわかった。
汗が体中の毛穴から染み出てくる。手が震えてる。
付き合う……?
あたしは、羽生くんと……有名人と、知り合いたかっただけだよ。
付き合うなんて恐れ多すぎて、想像しようとしてもバカらしくなっちゃってたのに……。
なんなのこの展開……。夢? どうなってるの、わたし。
…………でも。
これがもし本当なら、断る理由なんてないよ。
三ヶ月もあそこにバカみたいに通って、結果こうなるならおめでたいことじゃん。すごいじゃん。
でも……実感が沸かない。
羽生くんが私を、好き?
好き?
そんなこと、ありえる?
私は震える指でメールを打った。
[送信:羽生結弦]
本気?
たったこれだけの文章を打つのに、ものすごく時間がかかった。
なんだか泣きたくなった。
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作者名:mirin | 作成日時:2020年4月5日 17時