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「……で、俺はなんて呼べばいい……?」
「えー……普通でいいよ」
「普通?」
「うん、まあ、普通で」
「普通と言われても……友達にはなんて呼ばれてるの?」

すぐ、陽菜の顔が浮かんだ。

「普通に、名前で?」
「だーかーらー、普通って何だよ〜?」

羽生くんは困ったような面白がっているような笑顔で、私を見ている。
……この人、やっぱりかっこいい。整った顔してるし、肌が超絶綺麗……。

「とにかく、普通に。自然に、お願いします」
「お願いされてもね〜。んん〜じゃあA……さん?」

さん!?

「さ……さん付け?」
「……やっぱおかしいか」
「……うーん……じゃあ、あだ名でもつける?」
「あだ名? それ逆に難しくなってない?」
「そう……? 羽生……くん、はあだ名、ある?」
「特にないなぁ。……A……さんは?」
「私もない……から、お互い何かつけようか?」

羽生くんがすごくむずかしい顔をする。
それが何だかおかしかった。

「じゃあ、俺になにかつけてよ」
「んん〜……あだ名…あだ名……」

まずい。連想してしまうのはスケートばっかりで、それを気取られるのは非常にまずい。
何か、いいあだ名は……!

「……きりん」

私は、ぽつりと言った。

「き、きりん……?なんで?」
「え、だって……く、首が……長いから?」
「そうそう俺結構言われるんだよね首長いねーって……って、ちょっと待って!おかしいから色々と!」

すごい……。羽生くんがノリツッコミしてる……!
流れるようなノリツッコミっていうか滑舌良すぎだ……!

「何なのきりんって……。まず捻りが感じられないし、それ人前で呼べる? そんで呼ばれるの?俺、きりんって。呼ばれて振り向くの?やーだーよそんなのー」

テーブルに突っ伏す羽生くん。
おかしいのか、くつくつと笑って肩が震えてる。
いいと思ったんだけどな……。

「でも……かわいくない? 響きが……きりん」
「だいたいキリンって……ビールじゃん?」
「え、午後ティーとか生茶とかトロピカーナもキリンだよ」
「なんでそんな知ってるの……。ていうか知らないよ、何の話なの、もう」

呆れた顔をしていた羽生くんが、ぷっと吹き出した。
なんか……羽生くんてちゃんと突っ込んでくれるんだ……。
このテキトーに切り上げられる感みたいなのも心地いい。辛辣だけど結局やさしい、みたいな。




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設定タグ:羽生結弦 , 恋愛 , フィギュアスケート   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:mirin | 作成日時:2020年4月5日 17時

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