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「そんな……いいですよ。そこまでしてもらうのは、ちょっと逆に申し訳ないっていうか」
『いやいや、よくないです』
「でも……おごってもらうのは……」
さすがに奢ってもらうのはためらわれたけど、私は、行く気を固めていた。
ここまできたんだから……こんなチャンス二度とないに決まってるんだから……羽生くんとは、絶対友達になってやる。
陽菜にも、サプライズで紹介してあげよう。
『いや、よくしてもらったから。……それに、そんな高いものはおごらないし!』
私は、ふっと笑った。
「じゃあ……とにかく、行きます」
『よかった。じゃあ、今週の日曜でいいですか?』
羽生くんのほっとしたような声。
私たちは出会ったあの公園前の場所で、10時に会う約束をして、電話を切った。
私はすぐ、羽生くんの番号を登録した。
きっとこれから何度もかけるだろうという確信を持って。
私たちが「偶然」出会ったあの場所。
あそこで会うことを指定したのは、結弦だったよね……。
私は今もあそこを通るたび、胸が痛むんだよ。
だけど同じだけ、宝物を見つけたときみたいに胸があたたかくもなるんだよ。
結弦はあの場所で出会ったこと……今でも後悔してる?
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作者名:mirin | 作成日時:2020年4月5日 17時