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◇◇◇
携帯が、気になってたまらない。
羽生くんは本当に、電話をかけてきてくれるのだろうか？
私は何度も携帯を見ては着信を確認したり、落ち着かない時間をすごしていた。
「どーしたの？」
気が付くと、友達の陽菜が机の前に立っていた。
いつのまにか、帰りのＨＲは終わっていた。
陽菜は勝手に前の席に座る。
「A、携帯ばっか見てる。何かあった？」
「えー。別に何もないよー」
慌てて携帯を閉じた。
「誰かとメールしてるの？」
「ううん。全然」
陽菜は学年でも目立つタイプの女の子だ。
流行ってるものや情報を取り入れる能力がものすごく高い。
羽生くんがあの場所によく現れるという情報を教えてくれたのも陽菜。
私は、たいして興味ないふりしてた。
だから陽菜に今更、羽生くんと会ったことなんて、まして私がどんな目的で携帯の番号を教えたかなんて……絶対言えない。
自分でも、自分のことどうよ？って思うもん。
「そういえばさ、他校の友達が最近羽生くんと一緒にゴハン食べたんだってー。友達の紹介的な？ 」
陽菜が何気なく話し出す。
私はドキっとしたけど、なんでもないふりをした。
「まぁ、普通じゃない？ ゴハンくらい」
「そうなんだけどー、羽生くんてあんまりそういう、女子が来る集まりって来てくれないからさ。羽生くんと知り合うのって難しいんだよねー」
知り合えちゃったよ。しかもすごくナチュラルに。
私は待ち伏せしてたわけだから、実際ナチュラルでもなんでもないんだけど。
でも、羽生くんと知り合えただけじゃダメだ。
羽生くんと友達になって、交友関係を広げて、楽しいこといっぱいして、友達にも紹介して自慢して……。
だけど、羽生くんから電話が来なかったら、何にもならない。
……でも私は、本当は連絡なんて来ないで欲しいと願っていたのかもしれない。
こんな自分勝手な理由で羽生くんに近づこうと、三ヶ月もあの場所に立っていた私。
そんな自分が、最悪だって、わかってた。
勝手でずるくて最悪な私と、それに罪悪感みたいなものを感じてる私。
いやいや、結局どっちも最悪だ。
番号を教えてしまったこと……、私は心のどこかで、きっと後悔していた。
自分から、招いたことなのに。
電話がきて欲しいような、きて欲しくないような複雑な思いで、私は鞄に携帯をしまった。
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作者名：mirin | 作成日時：2020年4月5日 17時
