君と描く物語９

＃４２２ ページ22

無一郎side

僕の差し出した景品を、きょとんとしながらも受け取ってくれる先輩

A｢貰っていいの？｣

無一郎｢最初からそのつもりで取ったから｣

A｢…ありがとう！｣

ぬいぐるみをぎゅっと胸元で抱き締めながら、先輩は嬉しそうに柔らかく笑った

…可愛いな

元々、今日のお祭りの中で形に残る物を何かプレゼントしたいとは思ってたから丁度良かった

A｢これ、前に無一郎くんがUFOキャッチャーで取ってくれたぬいぐるみと同じ作品のキャラだよね

ふふ…家に帰ったら、二つ並べて飾るね！｣

無一郎｢…あの時のやつも、まだ持っててくれてるんだ｣

A｢勿論だよ！ベッドの脇の棚の上に座らせてるよ

あれも無一郎くんがプレゼントしてくれた物だもん…大切にしてるよ｣

無一郎｢…そっか｣

先輩の事だから、捨てたりはしてないと思ってはいたけど
ちゃんと飾って大切にしてくれてるのだと知れて素直に嬉しかった

先輩の、そういう優しくて丁寧な所が本当に好きだ

無一郎｢あっちの方も見に行こうか｣

A｢うん！｣

それにしても、今年も先輩とここに来れるとは思ってなかったな

あんな賭け事しなきゃ来れないって言うのは情けないけど…
それでもやっぱり、先輩と来たいって思っちゃったんだよね

僕が初めて先輩に気持ちを告げた場所だから…



A｢もうそろそろ花火始まるね｣

無一郎｢うん｣

去年と同じ場所で花火の打ち上げを待つ
打ち上げ開始時刻まで後 数分…

直前に買ったラムネを手に持ちながら、花壇の脇に腰を下ろして先輩は空を見上げる
僕はそんな先輩を静かに見詰めた

A｢…今日は誘ってくれてありがとう｣

無一郎｢え…｣

A｢カナヲも無事に竈門くんとお付き合いで来て今年は二人きりでも誘えるし、梅ちゃんは去年と同じでお祭りは不参加で

他の子達もそれぞれ恋人とお祭りに来る予定だったから、私が一人ぼっちにならない様にって思ってくれたんだよね｣

先輩はふっと僕に視線を向けてそう言った

何だ…バレてたか……でも…

無一郎｢…僕が先輩と来たくて我儘言っただけだよ

お礼を言うのなら僕の方だ…あんな子供じみた賭け事に付き合ってくれてありがとう、先輩｣

これだって嘘じゃない…

ｷﾞｭｯ

A｢…！///｣

先輩の小さな手を握ると肩が跳ねるのが見えて
その瞬間、一発目の大きな花火が空を照らした

無一郎｢…好きだよ｣ﾎﾞｿｯ


花火の音にかき消されたその言葉は、いつ先輩に届くのかな…

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