君と描く物語１２

＃５８１ ページ31

無一郎｢改めて…僕、先輩が好きだよ…誰よりもずっと

先輩が遠くに行っても、絶対に独りだなんて思わせない…独りにしない

今までは核心をつかずに、先輩の傍に居られる取って付けた様な理由を並べてズルい事ばかりしてきたけど…もうそれも今日で踏ん切りをつけたいんだ

どんな結果になろうと…だからA先輩、返事を聞かせて？｣

あぁ…また切ない顔
少し前の私なら、こんなに想ってくれる人を傷つけたくなくて間違った選択をしていたかもしれない

でも今は、そんな間違った選択をする程…もう子供じゃないから…

A｢…私、今までずっと無一郎くんの優しさに甘えてた

私が一番弱ってる時、いつも傍に居てくれた無一郎くんには感謝してもし切れないよ…

……けど…ごめんなさい…！私やっぱり、どうしても宇髄先生が好きなの…
忘れようとしても駄目で…いつも心の奥底に引っかかってとれないの｣ｸﾞｯ

無一郎｢…でも、復縁なんてできないかもしれないよ…？｣

A｢望みがないのはわかってる…どう頑張ったって無理かもしれないし、寧ろ迷惑がられるだけかもしれない

でも…宇髄先生が駄目だから無一郎くんとなんて…そんな最低な事絶対に嫌なの｣

無一郎｢僕がそれでもいいって言っても？｣

A｢うん、そんな事したら…私が私の事、もう二度と好きになれなくなっちゃう

無一郎くんや、周りの皆や…あの頃一度でも先生が『好きだ』って言ってくれた私を…私自身が大嫌いになっちゃったら…

その人達まで否定する事になっちゃうみたいで…それだけは絶対にしたくない

私が私を大切にする…これが私にできる、皆への恩返しの第一歩だと思うから…

……だから、ごめんなさい…無一郎くんとはお付き合いできません｣

無一郎｢…うん、ありがとう…ちゃんと振ってくれて

振られた直後に言う言葉じゃないかもしれないけど…
僕、やっぱり先輩を好きになってよかった

卒業しても頑張って…応援してるよ｣ｽｯ

差し出された右手に、私も右手を繋ぎ別れの握手を交わした

最後まで暖かい……っ

A｢うん…頑張る…っ…頑張るね。無一郎くんも、頑張ってね｣

無一郎｢うん…じゃあ、行くね…｣ﾆｺｯ

立ち去る背中は何処か吹っ切れた様にも見えて…

A｢…無一郎くん！｣

無一郎｢…｣ﾋﾟﾀｯ

A｢ありがとう……！本当に本当に、ありがとう…！」


応える事はできなかったけど本当に嬉しかった…


無一郎くんは最後に振り向き…笑顔を見せてくれた

＃５８２→←＃５８０

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す