君と描く物語１２

＃５６３ ページ13

結局、無一郎くんには何も言えなかった…

あんな風に切ない声を聞いたら、それ以上は口に出来なくて

A｢ﾊｧ…｣

天元｢どうした？疲れたか？｣

A｢あ…っ…いえ、疲れては無いです…！｣

いけない…部活中なのに他事考えて手が止まってちゃ、見てくれてる先生に失礼だよね

天元｢…何か悩み事か？俺で聞ける事ならいくらでも聞くぞ？｣

A｢…っ｣ｷｭｯ

私を心配してくれる先生の言葉とその優しさに胸がきゅっとなる

無一郎くんとの事で悩んでます…とは言えないから、宇髄先生に相談する事は出来ないけど
こうやって心配して気遣ってくれる事が嬉しい


別れてからずっと、忘れなきゃいけないんだと後ろ向きに感じていた先生への気持ちを
初めて素直に受け止めてから、少し先生への感情の動きが変わり始めてて

天元｢…ん？どうした？｣

A｢何でもないです…///｣ﾊﾟｯ

付き合っていた時にも増して、宇髄先生のちょっとした気遣いや言葉に気持ちが高ぶる

受験勉強としてこの場にいるのだから、余り浮かれた事を言うのは場違いなのは分かっているけど
それでもこうやって、放課後に宇髄先生を独り占めしている状況は嬉しくて…

A｢…あの…宇髄先生、質問いいですか？ここなんですけど…｣

天元｢ん？どれどれ…｣ｸﾞｲｯ

A｢…///｣

名前を呼べば応えてくれるこの瞬間が堪らなく愛しい


でもきっと私の気持ちを知ったら、先生は困ってしまうだろうから口にはしない

それに無一郎くんとの関係がこんな状態じゃ尚更…


色んな事が中途半端で、沢山やらなきゃいけない事がある
今は恋に目を向けている時間は無い


でもいつか…今抱える一個一個の事に丁寧に向き合って、全部の事がクリアになった時には……

A｢…///｣ﾁﾗｯ

天元｢…うーん、そうだな…この部分は……｣


もう一度だけ、私の気持ちを伝えてもいいですか…？


受け止めて貰え無いのはわかってる
もしかしたら、伝えてしまう事で…やっと戻ってきたこの距離を失ってしまうかもしれない

でもきっと、その時が来たら私は…

どんな結果になろうとも、どれだけ傷つこうとも
貴方に気持ちを伝えなければ良かった…なんて、絶対に想わない自信がある


天元｢…って感じで……わかったか？｣

A｢は…はい…！ありがとうございます！｣

天元｢ん。あと一息、頑張ろうな｣ﾆｺｯ

A｢…はい///｣

＃５６４→←＃５６２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す