君と描く物語１２

＃５５１ ページ1

天元side

…今頃Aは、どこかで時透と学園祭を楽しんでいるのだろうか

ついさっき、A達が休憩に入るタイミングで
時透がAを迎えに来ていたのが見えた


今日以外にも あの祭り以降、あの二人が一緒に居る所を何度か校内で見掛けたりしたけど
やっぱりその度に胸の奥がどうしようもなく痛む…

そして同時に…脳裏を過る あの光景……


好きな奴が他の男とキスしてる所を目撃するなんてな

…それに、Aは気付いてなかったようだが
多分時透の方は、あの時 俺の存在に気が付いていた

一瞬だったけど、でも確かにぶつかった視線…


まるで、自分の物だと…牽制を張る様な目だった


Aとは話す機会はあるが、時透とは全くと言っていいほど会話は無く…
Aと別れて以降は一回も言葉を交わしていない気がする

元々会えば口喧嘩ばかりだったが…

今のあの時透の態度からして…俺のとった行動を快く思ってない事と
Aを突き放してしまった俺への嫌悪感は計り知れないだろうという事は分かる



客足が落ち着き、俺も自分の休憩の為に美術準備室に足を向けた


ｶﾞﾗｧ…


＿A｢あ！宇髄先生！｣ﾆｺｯ


天元｢…｣

ここに来ると いつも嫌という程思い出す

Aと一緒に過ごした時間も、その愛おしい笑顔も……


去年はここで一緒に飯食って、下で賑わう生徒達を見ながら他愛もない話をしていたのにな…


天元｢………ぁ…｣ﾋﾟｸｯ

ふと見下ろした出店の通路…

そこには、楽しそうに笑うAの姿が見えた


勿論 その隣には…時透の姿


天元｢…｣ｽｯ

窓硝子に手を添えて、触れられるはずも無いAの姿に手を重ねる

Aの受験の妨げにはなってはいけないと、出来るだけ私情を殺して接しているけど

それでもふとした瞬間に、全て忘れて その髪に…肌に……全てに触れたくなってしまう時がある


いっそ全てを話してしまおうかと血迷いそうになる……



でも……

天元｢……っ｣ｸﾞｯ


やっとまたAの笑顔が見られるようになったのに、その幸せに水を差すような事…しちゃいけないよな


Aは俺の事なんて忘れて、新しい相手と幸せになったんだ…

元々伝える気もなかった気持ち

俺の勝手な我儘で、これ以上Aを振り回すなんて……


＿杏寿郎｢宇髄…君だって今過ぎていく時を大切にし、愛すべき人間だという事だ

ただ黙ってここにいる事が、君の望んだ時の過ごし方なのだろうか？｣


……俺は………

＃５５２→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す